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Down the Yokoo-Wonderland 横尾忠則の世界にまっさかさま 

王子公園で下車し、横尾忠則現代美術館に向かう私はとてもウキウキしていた。
学校へ向かう時、友人と遊びに行く時、バイトから帰る時、阪急電車を利用すれば同じポスターに目を奪われる。今回の「Yokoo in Wonderland -横尾忠則の不思議の国」のポスターだ。
余白の中に迷い込むアリスと「人生の楽園or架空のオペラ」の文字。
どのような展覧会なのか、どのような作品を鑑賞できるのか、全く見当もつかない。
さあ、謎を解き明かしに行くか!という少年心に満ちた私は美術館へ向かった。
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ただ私は遅刻との闘いを余儀なくされていた。(間に合った)

INFORMATION


横尾忠則現代美術館
〒657-0837
📍住所:神戸市灘区原田通3-8-30
⏰開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
🗓休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
 年末年始、メンテナンス休館(不定期)​
https://ytmoca.jp/

Yokoo in Wonderland -横尾忠則の不思議の国
🗓開催期間:2023年9月16日(土)〜12月24日(日)
🎟観覧料:
 一般 700円(550円)
 大学生 550円(400円)
 70歳以上 350円(250円)
 高校生以下 無料
※(  )内は20名以上の団体割引料金
※障がいのある方は各観覧料金(ただし70歳以上は一般料金)の75%割引、その介護の方(1名)は無料
※割引を受けられる方は、証明できるものをご持参のうえ、会期中美術館窓口で入場券をお買い求めください
(障がいのある方は、障がい者手帳アプリ「ミライロID」もご利用いただけます)
※楽天チケットでも販売しています
※関西文化の日〔11月16日(木)、11月17日(金)〕は無料でご観覧いただけます
https://ytmoca.jp/exhibition/2517/

ギャラリーツアー
👩‍🏫講師:当館学芸員
🗓日時:10月7日(土)、11月18日(土)、12月16日(土)
   ※いずれも14:00〜14:45
🎨集合場所:当館オープンスタジオ
🎟参加費:無料
✍️今回の取材班も参加させていただきました。作品の制作背景や作品同士の関連を知ることで、より広い視点で展覧会を楽しむことができました。展覧会を訪れる機会として是非オススメです👀

コラム①  横尾忠則的宇宙

                              (ライター:いち)

「地球は青かった」

世界で初めて有人宇宙飛行を達成したガガーリンの名言である。
ちなみにWikipediaによると、実際のガガーリンは"Небо очень и очень темное, а Земля голубоватая. "
「空はとても暗かった。一方、地球は青みがかっていた」と述べたらしい。

さて、
この記事を読む方の中に、宇宙旅行に行った人はいるのだろうか。どこかの社長のように、それを叶えるとんでもない資金力と行動力を持ち合わせた人はほぼいないだろう。
(マジでいたらコメントください)

しかし、私たちは「宇宙=黒・青」という色彩のイメージを持っている。多くは行ったこともないのに。
一応、「宇宙 フリー素材」で調べてみると、青みがかった黒い空間にキラキラとした星らしきものがある画像が沢山表示される。

とにかく私たちは皆「宇宙」「黒・青」を無意識に結びつけているのである。

では、横尾忠則が描く宇宙は何色だろうか。

赤です。

ギャラリーツアーで聞いた話によると、
1936年生まれの横尾忠則は小学生の時に第二次世界大戦を経験した。
戦時中を兵庫県西脇市で過ごしていた彼は、遠くの空が赤くなるのを見たという。そう、明石空襲である。
空襲で赤く染め上げられた空は、戦争の怖さを感じさせるとともに、綺麗で印象的なものだったに違いない。
この経験がベースにあるからなのか、横尾忠則はたびたび宇宙を描く際に、生死を連想させる赤を使用するという。

もう驚き。
「宇宙=黒・青」の連想ゲームの沼にハマっていた私にとって、赤い宇宙は正直受け入れにくかった。
しかし、宇宙は分からないが詰まった神秘的な空間であるとともに、生死と隣り合わせになっている空間なのかと色々考えているうちに、赤もアリだなという結論に達した。

また展覧会には、赤ではない宇宙の作品があった。

青です。

「これこれ、これが宇宙だよね」と思いながら、じっくり見るとトイレットペーパーが飛んでたり、人間?宇宙人?らしきものが黄色く発光していたり。
そのポーズめっちゃ気になる。

トイレ内のミステリー"Y"

特に気に入ったのは、この「トイレ内のミステリー"Y"」だった。
画面には、スーツ姿の人とパジャマのようなラフな服装の人がいる。この2人が同一人物ならば、サラリーマンっぽい人が苦しい現実から逃避するようにトイレの中で宇宙に思いを巡らせているのかなと感じた。

また、同じサポーターズの子が「ピーターパン」みたいと言っていたのがとても印象的だった。
たしかに。宇宙空間をふわっと飛んでいる様子はネバーランドを飛び回るピーターパンのイメージそのものである。

その連想を踏まえると、サラリーマンっぽい男性はどこか大人になれない部分、自己中心性や無責任さを含んでいるのかもしれない。

他にも展示会場では、宇宙人より位の高い宇宙霊人が大きく描かれた「愛の美三神」や、横尾忠則自身が交流したらしい宇宙人を描いた「死の愛」を見ることができた。

死の愛

え、横尾さん宇宙人と交流したんですか!?
ギャラリーツアーで最も驚いたポイントだった。

しかも「死の愛」をよく見ると、宇宙人の隣にはKIRIやKENなどの名前が添えられている。互いに自己紹介というか、名乗りあったりしたのかなとか考えると少し微笑ましさを感じる。
とりあえず、私も宇宙人と話してみたい。

結構自由に書いたら、あまりまとまりのない文章の羅列となってしまったので、この辺で締めさせていただきたい。

私のコラムでは、横尾忠則的宇宙というか横尾忠則が見る宇宙を、彼の作品から覗いてみた。今回の展覧会自体が章立てされている中でも、特に第1章:不思議の国ではさらに細かくパート分けがされている。

私は宇宙に焦点を当てたが、他にも洞窟、海中、死後と様々な切り口で横尾忠則の作品を鑑賞できる。

同じパートに属する作品たちに共通するモチーフや構図を見つけるなど、作品を比較しながら歩き進めるのをオススメしておこう。

コラム② 横尾世界に冒険

                                (ライター:ちり)

向こう側が見えないものは、私をワクワクさせる。

幼少期の私は、公園にある排水溝の穴、木の穴、地面の穴…。

とにかく穴が好きだった。

穴から見える向こう側は真っ黒で、何があるのかわからない。

表面からでは、実際どうなのかわからないのである。

冒険も同じだと言える。
始まる前に想像することと、実際起きることは同じだろうか。いいや、違うだろう。
冒険というキーワードと一緒に洞窟が出てくるのは、このようなことがあるからではないかと感じた。不思議の国のアリスでは、穴に落ちることで冒険が始まる。

第1章不思議の国では、横尾さんらしい独自の世界観が生み出されていた。
この章で印象的なキーワードは洞窟だ。
特にこの作品は、私をワクワクさせた 。

1作目: 「地球の果てまでつれてって」

地球の果てまでつれてって

洞窟の中では、ダンスをしている男女、沐浴をする女性、また人に刃物を向け、死人を出す人、さらに自殺している人というように、様々なことが起きている。
それに対して、3人組の少年たちがなにか話している。

横尾さんの少年時代は、探偵小説が大好きだったようだ。
この少年たちも、その作品を参考にしている。

この絵について、いろんな方向から考えさせられた。

まず、これらは洞窟で起きているはずがない。さらに、それぞれ同じ洞窟で起きているにもかかわらず、本人たちは気づきもしない。

この作品は何を表しているのだろうか。
私の中で想像したことは2つある。

洞窟に対して考え①

1つは、洞窟の中を地球と見立てて、世界で起きている様子を表していること。

この作品は、「地球の果てまでつれてって」というタイトルである。
1994年に制作されているが、その前後に起きたことから考えてみる。

歴史より振り返ると、1992年に日本ではバブル崩壊が起こり自殺者続出、1994年にはルワンダで内戦が起き、大量虐殺などと作品に重なるようなことが起きていた。
絵と重なる点はある。

また単純に地球上では、幸せな人がいれば、苦しんでいる人もいることを表しているのではないかとも考えられた。
手前は明るく、奥に行くほど悲しい。前後で明暗が感じられ、描き方が面白く感じた。

洞窟に対して考え②

2つ目は、いろんな人の夢の世界を表していること。
これは第3章夢の国より紐づけ、また夢の国のアリスでは、冒険が夢の中での出来事だったことから考えられた。

夢は、寝る時に見る夢と、未来に向けての夢の2通りが考えられる。

寝る時の夢の場合、覗き見している少年たちが楽しそうだと思った。
私は夢のことを話すのが好きだ。楽しい夢、嫌な夢を人から聞くのは、本を読んだみたいで面白い。このように多種多様なことが起きるのも理解できる。

未来に向けての夢は、私の中で一番納得する答えだ。
作品をもう一度見てみよう。

地球の果てまでつれてって

ダンスをしている男女は、好きな人と踊りたい、沐浴をする女性は綺麗な水に浸かりたい、人を殺している人は恨みを果たしたい、自殺している人は早く楽になりたいというようないろんな欲を露わにする。

欲を露わにする様は、人間らしく良い。

2作目: 「6月27日の子宮内での出来事」

もう一つの作品にも、3人組の少年たちが登場する。
タイトルは「6月27日の子宮内での出来事」である。

6月27日の子宮内での出来事

こちらを向いている少年の顔に注目してほしい。
実は、横尾さんの少年時代の自画像である。

さらに真ん中にいるワニらしきものを撃退する様子は、横尾さんが少年時代に愛読していた山川惣治作画の少年王者の表紙を模写している。

また右奥の女性の横顔の下には英語でヘレンケラーという文字がある。
横尾さんはタイトルの通り、6月27日に生まれたが、ヘレン・ケラーも同じ日に生まれたそうだ。

この一枚の絵だけで、横尾さんのことが表されており、見ていてわくわくする。

横尾さんの作品は、見ている側に考える時間を与えてくれる。

知識を持っていても、持っていなくても楽しめる作品は、今回も魅力的だった。

先が見えない洞窟から、冒険が始まり、物語が進む。

今回の展覧会は、横尾さんという人の中に入り、横尾さんの作る世界の中で冒険できたように思える。

童心にかえり、横尾世界に冒険してみてはいかがだろうか。

コラム③ 鏡の→夢の国 

                               (ライター:のん)

初めて訪れた横尾忠則現代美術館。ワクワクが止まらなかった。

作品を見た最初の一言。
「お~。」

色鮮やかな作品の数々。どの作品を見ても不思議な感覚に引き込まれる。
作品を見ていて正直、横尾忠則がどんな意図でこの作品を書いたのか全く分からなかった。全くと言うと語弊があるが、ともかく難しいのである。

このことを前提にコラムを綴らせていただく。私がコラムを書く上での最大の目標は、読者の方に「こんな作品があるんだ~。」と気に留めてもらえることである。
少しでも関心を持ってもらえると、私のコラムは大成功である。
よし、やる気出てきた。

少しふんわりした感じになるかもしれないが、私のコラムスタート。

今回紹介する作品は二つ。第2章と第3章から一つずつ紹介する。

まずは第2章からこちら。

Art is not Produced by Suffering

横尾忠則の作品に正解なんてないと考えている。ということで、推理タイムスタ~ト。みなさんも推理してみましょう!

私の推理。
作品の中心にいるのはイエス・キリスト?
十字架で貼り付けになっているのを再現?
二人の顔は、生の世界と死の世界を表現?
指をさされているのは多くの民衆に注目されていたから?
*あくまで推理のため、正解ではないことをもう一度お伝えしておく。

名探偵コナンの気分に少しなれたので、この作品についてはおしまい。

ちょっと待った~~~~。

肝心なことをお伝えできてなかった。なんてこった。
今回の展示会は不思議の国アリスをテーマに展示されている。
この作品はこのテーマの鍵となっている。さてそれはどの部分でしょう?ヒントはこの作品の上の部分。大ヒントだ…。

答えはこちら。

なんと、アリスの人形が!!!!
少し怖い感じではあるが、テーマにリンクする。
このことについて詳しく知りたい方はギャラリートークへ。

次の作品へ参りましょう。

私のイチ押し夢枕コーナ~。パチパチパチ~。
この第3章のシリーズ描かれている、寝ている人が横尾忠則、黒い人が夢の横尾忠則である。
他にも沢山夢枕シリーズがあるので、ぜひみなさんにもお気に入りの作品を見つけていただきたい。

今回私のお気に入りとなった作品がこちら。

夢枕三十九

*少し画像が暗いのは私の写真技術不足なのでご了承ください。


この作品を実況してみた。
おっと、首を切られているのではないか!
「エイッヤッ」←この表現かわいい。
首を切られて何かを訴える黒い人。「おい~~~!」
下を見るともう一人黒い人が!首あたりに包帯を巻いて頭がな~い。
この頭はどっち?謎は深まるばかり。

こんな感じに思ったが、みなさんはどう感じただろうか?

少し長くなってしまったが、ここで私のコラムはおしまい。

おわりに

いかがでしょうか。横尾忠則ワールドへ足を踏み入れたくなりませんか?
このページへ辿り着いたみなさん、どうもありがとうございました。
次回の投稿を楽しみにお待ちくださいませ。

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