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Bebe Rexha『Best F‘n Night of My Lifeツアー』7月1日ロサンゼルスThe Wiltern公演

サード・アルバムにして最高傑作となった新作Bebe / ビービー』のリリース後、シンガーソングライターのBebe Rexha(ビービー・レクサ)は、“ベスト・ファッキン・ナイト・オブ・マイライフ”と銘打った北米ツアーに乗り出した。

だがこのツアーの最中に、全米のT Vでニュースになる事件が起こった。6月18日、彼女が生まれ育ったニューヨークでの公演で、観客がBebeに投げつけた携帯が、なんと顔、しかも左目のすぐ上を直撃したのだ。翌日Bebeには、3針縫った上にあざが色濃く残っている顔写真をインスタグラムに投稿し、昨年末からラジオでヒットし続けているDavid Guetta(デヴィッド・ゲッタ)との曲のタイトルにかけて

「I’m good.」

とコメントしていたのだけれど、私はツアーが中止されるのではないかと心配だった。

だが、メジャーデビュー前に何年も苦労し続けてやっとブレイクしたBebeは、こんなことでめげるスターではなかった。翌20日にS N Sでツアーの続行を宣言、そして30日に、最終公演地ロサンゼルスでの初日を無事終えたのである。この夜は、Bebeが目を保護するゴーグルのようなサングラスをつけてパフォーマンスをしていたことと、

「物を投げないで、楽しんで!」

とステージで語ったことがニュースになっていた。

ライブ・レポート

私が訪れた2日目、ツアー最終公演のBebeは、そのようなプロテクションを一切しなかった。ミラーボールの如く輝くグリーンのボディースーツで登場し、『Bebe』の収録曲の中でも特にドラマチックな「I'm Not High, I'm In Love」で幕を開けた煌びやかなステージは、一瞬にして会場をダンスフロアに変えた。そこから「Miracle Man」「Heart Wants What It Wants」と70年代のディスコ・サウンドを取り入れた斬新な新作からのシングルを立て続けに披露して会場を熱狂の渦に巻き込み、続くGイージーとのコラボ曲「Me, Myself & I」で大合唱を巻き起こした彼女は、現代屈指のロック・ディーバと称したくなる眩しいオーラを放ちながら、オーディエンスを盛り上げ続けた。彼女のライブがロック寄りなのは、バンドを従えた構成になっていることにも由来するが、このバンドメンバーの演奏も彼女のパワフルな歌声に劣らず強力だった。そして彼女の両脇で鮮やかに踊る女性ダンサー二人が、ロックなサウンドのステージを一層華やかにしていた。

Bebeが非常に芯の強いファイターであることは、彼女の曲を追い続けてきたファンなら知っていることと思う。その強さは、自分の弱さをモロに出して見せる曲の数々に現れている。5曲目に披露された「I'm A Mess」もそうした曲の一つだ。そもそも、彼女がソングライターとして初の全米ナンバー1を獲得したのは、2013年にエミネムに提供し、リアーナとのコラボ曲として大ヒットした「Monster」だった。彼女の抱える不安障害と鬱をモンスターになぞらえた非常にダークな歌詞の同曲に続けて、彼女はデビューE P『I Don’t Wanna Grow Up』のシングル「I’m Gonna Show You Crazy」を2015年にリリースした。当時、この曲は歌詞が暗すぎるためにレーベルにリリースを反対されたという。しかしだからこそ、Bebeのファンと彼女の間には、他では得られない強力な繋がりができたし、Bebeはポップというジャンルの中で、特にリアルな歌を歌うスターいうイメージを確立し、最終的にマイノリティの女性とクイアのファンを多く持つスターになったのだ。ちなみにこの夜、Bebeは前作の「Sacrifice」を、会場の大半を占める女性とゲイの観客に捧げた。

そんな過去を踏まえて最も心が震えるハイライトとなったのは、アコースティック・ギターの伴奏に合わせて熱唱された「I’m Gonna Show You Crazy」だ。Bebeは、「この曲は反対されたけど、リリースして本当に良かった。当時、メンタルヘルスについて歌っている人は他にいなかったから。それから今、辛い時期にいる人は、大丈夫だからね、絶対に乗り切れるから」と言った後、アコースティック・ギターの伴奏に合わせて熱唱。感動的な大合唱が会場を一つにした。誰もが、この曲を大事に思っていることが伝わってきた。Bebeの幅広いレンジの歌唱力の凄さはライヴになるとありありと分かるのだが、この曲と、その前に披露された新曲「Seasons」Bebeでは、カントリー・レジェンドのドリー・パートンとのデュエット曲になっている)は、本当に圧巻だった。

その後、夏のパーティにぴったりのスヌープ・ドッグとの共演曲「Satellite」でショウをダンスパーティに戻した彼女は、最後に全米2位を達成したフロリダ・ジョージアラインとのデュエット曲「Meant to Be」でさらに大きな合唱を創出し、アンコールで「I'm Good (Blue)」を披露して、総立ちの観客が踊ってジャンプする中で「人生最高の夜」を締めくくった。

思い切り大声で歌い、踊りまくっただけでなく、何度も涙腺が緩んだ本当に最高の夜だった。Bebeは7月28日からヨーロッパでのツアーに乗り出すが、日本にもできるだけ早く、この“ベスト・ナイト”を届けて欲しいと強く思った。(鈴木美穂)

皆さんも、是非Bebe Rexhaの最新アルバム『Bebe』を聴いてみてください。


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