武器兵器調達課#97:  「X-32」

今回は「X-32」について見ていきましょう。

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「X-32」: ボーイング社が統合打撃戦闘機(JSF)計画のために開発した試作実験機(概念実証機)です。通常離着陸/空母離着陸型(CTOL/CATOBAR機)のX-32Aと短距離離陸垂直着陸型(STOVL機)のX-32Bの2機が試作され、それぞれ2000年9月18日と2001年3月13日に初飛行しました。

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1. 開発経緯

X-32は、アメリカ国防総省が主導する統合打撃戦闘機(JSF)計画のために開発されました。JSF計画は、アメリカ空軍、海軍、海兵隊がそれぞれ運用する戦闘機を共通化し、開発・運用コストを削減することを目的としたものです。

1997年、ボーイング社はX-32の開発契約を獲得しました。ボーイング社は、通常離着陸/空母離着陸型(CTOL/CATOBAR機)のX-32Aと短距離離陸垂直着陸型(STOVL機)のX-32Bの2機の試作機を開発しました。

2. 機体設計

X-32は、高いステルス性と優れた運動性を兼ね備えた戦闘機として設計されました。

  • ステルス性: 機体は複合材料を多用し、機体形状もステルス性を考慮したものになっています。レーダー波を反射しにくく、敵のレーダーから発見されにくくなっています。

  • 運動性: エレクトロニック・コントロール・システム(FCS)と呼ばれるフライ・バイ・ワイヤシステムを採用し、優れた操縦性を発揮しました。また、高迎え角での飛行性能も向上しており、ドッグファイトなどの戦闘機動に優れています。

3. エンジン

X-32は、プラット・アンド・ホイットニー社製のF119-PW-100 ターボファンエンジンを2基搭載していました。このエンジンは、アフターバーナーを使用すると推力が大幅に向上し、短距離での離陸や垂直着陸が可能になりました。

4. 兵装

X-32は、内部ウェポンベイに20mm機関砲1門と各種空対空ミサイル、外部ハードポイントに爆弾や対艦ミサイルを搭載することができました。

5. アビオニクス

X-32は、当時としては最新のアビオニクスシステムを搭載していました。ヘッドアップディスプレイ(HUD)やマルチファンクションディスプレイ(MFD)などのほか、統合センサーシステムやデータ融合システムなども搭載されていました。

6. テスト結果

X-32は、2000年9月18日に初飛行し、その後2年間以上にわたって各種試験が行われました。試験では、高いステル性、優れた運動性、十分な兵装搭載量など、JSF計画の要求性能を満たしていることが確認されました。

7. 不採用

しかし、2001年10月26日、JSF計画の最終選定において、ロッキード・マーティン社のX-35が選定されました。X-32は、エンジンや垂直離着陸方式の関係で大容量のウェポンベイを設置しにくいなどの理由から、不採用となりました。

8. その後

X-32の2機の試作機は、現在アメリカ国立航空宇宙博物館に展示されています。

9. 影響

X-32は、JSF計画には採用されませんでしたが、その開発技術は、F-22 ラプターなどの戦闘機に活かされています。また、X-32の開発経験は、ボーイング社にとって貴重な財産となり、その後の戦闘機開発に大きく貢献しました。

10. その他

  • X-32は、ボーイング社にとって初のステルス戦闘機でした。

  • X-32の愛称は "Lightning II" でした。これは、後に採用されたF-35の愛称と同じものです。

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