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算数の文章題が解けない!? 4ステップのつまずき箇所を明らかにして対策を

算数において「計算や九九は出来るが、文章問題が苦手」という子どもが見られます。実際テストの結果を見て、「計算問題は正答しているのに、文章問題だけができていない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

これまでに紹介した「黒板の文字を写すのが苦手」「特殊音の読み書きが苦手」などと同様に、その原因は子どもによって違います。

なぜなら、算数の文章問題はワーキングメモリのいろいろな機能を使って解くため、たった1ヶ所につまずくだけでも答えにたどり着けないからです。

その原因がわからないままに対策をしても、なかなかできるようになりません。まずは、算数の文章題を解く間のプロセスを、ワーキングメモリの観点から見ていきましょう。

算数の文章問題を解く際の4ステップ

たとえば、「長方形の面積と縦の辺の長さから、横の辺の長さを求める」ような問題があったとします。その際、下記のようなステップで問題を解いていきます。

1. 文章問題を読む
2. 与えられた状況を理解する
3. いろいろな解き方を考え、どの解き方がよいかを判断する
4. 立式し、解答を出す

それぞれのステップを、細かく見ていきましょう。子どもが頭の中でつまずいている箇所を、「つまずきポイント」として記します。

1.文章問題を読む
書かれている文章を読むので、「長方形」「面積」「辺」といった漢字の読み方を知っている必要があります。さらに、言葉の意味を理解したうえで、「横の辺の長さを求める」という目的を言語的短期記憶にとどめて、最後まで覚えておく必要もあります。

ワーキングメモリの「言語領域」「視空間領域」のうち、主に「言語領域」を使います。

①つまずきポイント:語彙力読解力
・言葉や文の意味があいまい
・何を求められているのかわからない
・(問題で問われている)目的を覚えていられない

2. 与えられた状況を理解する
図式化すると、与えられた情報がわかりやすくなることがあります。その場合、文章から図をイメージできなくてはなりません。たとえば、「面積が50㎠で縦の長さが10cmの長方形」と書かれていたら、頭の中でイメージし、紙の上に図示していきます。

ワーキングメモリの「視空間領域」を主に使います。

②つまずきポイント:イメージ化
・言葉から形のイメージができない
・文章から図式が書けない
・途中で目的がわからなくなる

3. いろいろな解き方を考え、どの解き方がよいかを判断する
文章に書かれた情報から正しく図が描けたら、公式をはじめとする知識を思い出します。面積の求め方や法則などを記憶から引っ張り出し、適切な解き方を見つけ出します。

ワーキングメモリの「言語領域」を主に使います。

③つまずきポイント:知識の取り出し
・公式や解き方を知らない、またはその知識を思い出せない

4. 立式し、解答を出す
解き方がわかったら、実際に式を作り、計算をして答えを求めます。計算問題ができる子どもであれば、ケアレスミスがない限りスムーズに進められるはずです。

ワーキングメモリの「言語領域」「視空間領域」のどちらも使います。

④つまずきポイント:式をつくる、計算
・計算ミスをする
・不注意の傾向がある

頭の中で、これほどたくさんのステップに取り組んでいることを、知ってもらえたでしょうか。対策する前に、まずはつまずきポイントをはっきりさせる必要があるのです。

対策するために、つまずいている箇所を特定

文章問題は1つの問題にすぎませんが、そのステップは複雑。つまずいている箇所を特定して対策するのが得策です。保護者や塾の先生など大人の方が横について、一つずつ聞いていくのがよいでしょう。

1. 文章が読めない。意味がわからない
問題文を音読してもらい、しっかりと読めていることを確認します。また、それぞれの言葉の意味が理解できていることもチェックしましょう。
声かけの例:
「音読してみようか」
「『長方形』ってどういう形?」「『辺』ってどういう意味?」

2. 図に示せない
問題文を図に示してもらいましょう。紙の上に実際に描いてもらいます。「長方形」「縦10cm」などの手がかりに注目させます。
声かけの例:
「長方形描いてみようか」
「縦の長さは何cm?」

3. 解き方がわからない
解き方を実際に尋ねてみます。
声かけの例:
「面積はどうすれば求められる?」
「公式を言ってみよう」

4. 計算ができない
ミスなく計算できることを確認しましょう。

このように丁寧に声かけをしながら、何問か解いてもらいましょう。毎回同じ箇所でつまずくのであれば、その場所を重点的に学習すると、文章問題が解けるようになる可能性が高まります。

日々の学習で対策を講じる

つまずいていた箇所がわかったら、日ごろからその箇所を補うような学習をしていきましょう。

1. 「文章が読めない。意味がわからない」の場合
「長方形ってどういう形?」「辺はどこ?」と、日ごろから言葉の意味を聞くようにするとよいでしょう。ワーキングメモリでは、言葉を音で処理しているので、口頭で確認するようにします。

また、普段、図形を表すのに「縦」「横」という言葉を使っていると、文章問題の「一辺」という言葉が理解できない場合があります。「一辺ってどういう意味?」など、別の言葉も使い語彙を増やしましょう。

2. 「図に示せない」の場合
1の場合と共通する部分もありますが、「正方形を描いてみて」「長方形を描いてみて」など、こまめに練習するようにします。「1辺が3cmの正方形を描いてみて」と、問題文のような質問でたずねるとさらに実践的です。

また、問題文のどこに注目したらよいかわからないようであれば、問いの部分に線を引いたり、数値が書かれた大事な部分を□で囲ったりするのが有効です。

3. 「解き方がわからない」の場合
日常的に、「正方形の面積を求める公式を言ってみて」など、公式や解き方を確認するようにします。1や2とも関連しますが、「一辺が3cmの正方形を描いて面積を求めてみて」と聞いてみるのもよいでしょう。

4. 「計算ができない」の場合
基本的には、計算問題が解けていればここでつまずくことはありませんが、計算が苦手であれば、計算ドリルなどに取り組みましょう。

日ごろからちょっとした工夫をしていくことで、子どもに文章問題を解くための力がついていきます。まずは、つまずいている箇所を特定してから、その部分を重点的に学習し、子どもの「困り度」を減らしていきたいですね。

例外として、ワーキングメモリに問題がなくても、興味や関心がなくて文章問題に取り組めない子どももいます。

その場合には、好きなものと絡めて問題を出してあげてみてください。たとえばサッカーが好きな子どもなら、台形を覚えるときにゴールの形を例に出すなど、子どもの興味と関連づけていきます。

また、ワーキングメモリの特性がわかれば、つまずいている箇所を特定しやすくなりますから、HUCRoWアセスメントを活用してもらえるとうれしいです。

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編集協力/コルクラボギルド(文・栃尾江美、アイキャッチ画像イラスト・北村侑子、編集・平山ゆりの


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