株式会社明治における乳酸菌R-1株の研究開発を学ぶ
こんにちは!暇な女子大生のしろくまです。
今日は株式会社明治さんが行った乳酸菌R-1株の研究開発について見ていきます!この季節、風邪を引かないために赤いパッケージのR-1ヨーグルトを飲んでいる方も多いのではないでしょうか。この乳酸菌飲料の研究開発の経緯を(勝手に)勉強したいと思います!
まずはこちらのページを参考に大まかな流れを調べてみました。
1990年代 東北大グループがLactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus
OLL1073R-1の免疫活性化作用を報告(in vitro ?)
2001年 明治のグループが研究を開始
乳酸菌→多糖体を産生→免疫調節作用
当時はvitroで多糖体を作用させて細胞増殖/サイトカインを見るのが主流
明治ではNK活性に注目
CD4 T細胞が産生するIFN-γの産生誘導を指標にすることに
〜2006年? 最初のスクリーニングは多糖体をいかに大量産生するか
保有ブルガリア菌139株→10株→3株選抜
これが産生する多糖体をvitroで脾臓細胞に反応させた
1073R-1のみがIFN-γ産生に寄与した
→この時点で、株としては1073R-1に決定?
2006年ごろ? NK活性の更なる検証
1073R-1が産生する多糖体を経口投与実験に使いたい
→大量精製の必要性、条件検討
精製した多糖体を3wksマウスに経口投与
→脾臓細胞でのNK活性上昇
1073R-1とサーモフィルス菌で発酵したヨーグルトを4wksマウスに経口投与
→1073R-1のヨーグルトのみで脾臓細胞のNK活性上昇
→1073R-1で発酵したヨーグルトを「NK細胞活性化剤」として特許取得
〜2011年? 北里大と共同研究
マウスでインフルエンザウイルス感染モデルを用いた研究
3群にそれぞれ水, ヨーグルト, 多糖体を経口投与
後者2群で生存率上昇、脾臓細胞のNK活性上昇、
肺洗浄液中の抗体増加、ウイルス価の減少が見られた。
→消費者の関心を引けそうなvivoでのデータがとれた
2005年, 2006年 山形県舟形町、佐賀県有田町の健常高齢者を対象に
humanでの試験。ヨーグルト摂取群でNK活性および
風邪罹患リスクの低減を確認。
→CMでも使われているわかりやすいhumanデータ
2008年 多糖体の含有量が充分になるよう注意しながら製品化を進め、準備が整う(多糖体を多く含むため独特の粘性を有する)
2009年春 新型インフルエンザのパンデミック
2009年12月 タイミングを見計らって発売
2010年〜2011年 佐賀県有田町で製品配布キャンペーン
2012年 インフルエンザワクチン接種前に摂取することで
抗体価が高まるか試験→ヨーグルト摂取群で高値を得た
その後も研究は続いているようなのでレビューしたいです。
明治さんは、R-1株の免疫賦活作用について、推定作用機序を以下としています。
R-1乳酸菌発酵ヨーグルト摂取→多糖体が腸管から取り込まれる→樹状細胞やマクロファージが認識→IL-12産生上昇→T細胞およびNK細胞のIFN-γ産生上昇(NK活性の上昇)、また樹状細胞活性化に伴う抗体産生能上昇
<参考になった点>
・乳酸菌と免疫システムの【接点】として多糖体に注目している点。
他社だと死んだ乳酸菌から漏れ出るRNAとか。
・乳酸菌株のスクリーニング手法。注目物質の産生量、という点から始める。
(産生物質の効能は後回し)単純に測定すればいいから楽そう
・株を選んだら、vitro, vivoでベーシックなデータを取り特許取得。
・共同研究で一般消費者にも分かりやすいデータを取る。
・humanに実商品を摂取してもらってプロモーションに使えるデータをとる
<疑問点>
・脾臓細胞とのcoculture実験?(論文アクセスできないからわからんけど)で、抗原入れてないのにCD4 T cellからサイトカイン上昇?
・IFN-γ産生上昇という結果に対して、Type 1アレルギーなどのリスクがどうなるか
・乳酸菌の免疫抑制能の報告もある(他社、他株)。
サイエンティフィックに矛盾しないか。製品開発視点、消費者庁視点(トクホ)ではどうか。
余談ですが、明治さん主催の展覧会に行ってきました!
君と免疫。展
http://www.meiji.co.jp/do-wonders/exhibition/
会場の様子はこちら
当日は入場制限になるほどの盛況ぶりでした。
R-1ヨーグルトは研究そのものというよりプロモーションがめちゃくちゃ上手いな~と思います。
(余談の余談、解説に「未成熟胸腺細胞」とか「自己と非自己」とか多田富雄先生のお名前が書かれていて、これを来場者達が目にしたと思うと胸熱)
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