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アンダンテ

STAY HOMEの期間中、わたしはいつもの仕事が半分無くなり、今までは考えられない程の自由時間を突然手に入れました。

先行きの見えない不安はもちろんあったものの、不思議と悲壮感はなく、この時間をどう有意義なものにしていくか考えていました。
と言っても、いろいろと制限がかかる中で特別なことは思い付かず、お菓子を作ったり、映画をたくさん見たり、普段歩かないところを歩いたりと、"よくある"おうち時間を楽しんでいました。でもそんな"よくある"過ごし方の中にわたしはたくさんのゆたかさを見つけたような気がしています。

その中でも素敵だったのが散歩です。時間はたっぷりあるので、近所ではなく、少し離れた駅の方まで。大通りを避け、家の連なる狭い道や川の近くなどを1〜2時間ほどじっくりと歩きます。

電車移動では通らない道を通って、街から街へたどり着くと、方向音痴のわたしでも頭の中で地図が出来上がっていくのがとても楽しい!歩いているうちに、なんとなく街の雰囲気が移ろっていくのを感じられるのもとても面白い発見でした。

そして何より、それぞれのお家の庭先はとても素敵なギャラリーでした!丁寧に手入れされた花壇や、小さな畑、センスよく植えられた植物たちが季節を教えてくれました。
公園で立派に佇む樹々も、お行儀よく並んだ花も遠慮なく咲いている姿が印象的でした。

他にも歩くはやさは、いろいろな感覚を与えてくれました。
ひんやりとした風がふっと夏を連れてきて暖かくなったり、夕陽が木葉の裏に映って金色の縁取りをつくったり、夜の手前の空はやさしいピンクと藍色のグラデーションに染まったりすること、そしてそれらを「なんかいいな」と思うことはこれまでの生活では見過ごしていたり、じっくりと感じられる機会がなかったことでした。

日々の忙しさの中では忘れてしまう、歩くはやさで見る世界の美しさに気付けたこと、そしてそれを大切な人と感じることができた時間は、わたしの心をきっとゆたかにしてくれました。
この気持ちを忘れないで、ゆたかな心で、毎日を過ごしていけたら、やさしい人になれるかな。

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