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女神のお庭でバーべ会


半月ほど前のことになりますが、職場の友人にお招きいただいたバーべ会のことを書きたいと思います。



さて……(コホン)


「職場の友人」という表記は何ら間違いではないのだけれど、バーべうんぬんの前にまず少し語らせていただきたいことがある。しばしお付き合いいただきたい。



ひとつ年上のその友人との出会いは6年前に遡る。私が勤めている会社では定期的な配置換えがあるのだけれど、6年前の春、私が籍を置くお隣の部署に彼女は異動してきた。

彼女をひと目見た瞬間、「こんなうつくしい人がわが社にいたんかい!!」と全身に電流が走った

今更ながらの申告でアレなんですけども、私は非正規雇用で勤めているので、基本的に異動というものがない。今の部署にお世話になることかれこれ9年、自分の周囲にやって来る顔ぶれは次々と変わってゆくものの、自分が動かないもんだから、同じ会社の大半は知らない顔なのです。


ほっそりと華奢な体つき、すんなりと伸びた細い手足。ゆるやかにウェーブした艶やかな栗色の長い髪。品のある微笑みを浮かべた唇。シンプルでありながらも、どこか可愛らしさと絶妙な色香を感じさせる服装。何より印象的だったのは、長いまつげに縁どられた涼しげで理知的な眼差しだった。



バチンコにどストライクだオイ……



その日から、彼女をひそかに「美の女神ミューズ」と(心の中で)呼び、(本人には悟られないように)熱い視線をチラチラと投げかける毎日が始まった。

彼女の風貌に関しては、元乃木坂46の橋本奈々未ちゃんをイメージしていただければと思う(本人には全力否定されたけど、似てるの、雰囲気が)。ぶっちゃけ私がななみん推しになったのは、ひとえにこの美の女神ミューズとの出会いがきっかけだ。


隣の部署とはいえ仕切りのないフロアにそれぞれの席があり、おまけに彼女の部署と私の部署は業務上何かと絡む機会もある。お近づきになるチャンスはいくらでも作れるのだろうけれど、筋金入りのおシャイさんである私は日々の挨拶を交わすのがやっとだった。それでも一言挨拶を交わせれば有頂天になったし、たまーに彼女から「ワカナさんこういうの得意だって聞いたんだけど、頼めますか……?」なーんて仕事のお願いされようもんなら天にも昇る気持ちっていうか脳内で一個大隊の天使がいっせいにラッパを吹き鳴らす始末。しかしながら、何しろ病的なおシャイさんであるため「……っス、お預かりしまっス」等と表面上はあくまでCOOLな態度を崩さず、呼吸をするかのごとく緩みそうになる口元を必死で引き締めて日中を過ごし、帰宅後ただちに当時お付き合いを始めたばかりだった恋人に「ねえねえ聞いて!今日ね!あの人とお話しちゃったんだけどね!!モーほんっとマジきれいだしいい匂いするしヤバかったー私変なオーラ出てなかったか超不安なんだけど大丈夫かな!?ンモー何であんなすてきなんだろうあの人……eternal love……」みたいなLINEを送り付けていた。恋人はその当時からゆるぎなく菩薩であったため、「もう知らない仲じゃないんだしさー、呑みとか誘ってみれば?絶対イケるって!ワカナ、ガンバ☆」等と私を激励してくれたのだけれど、何しろ前世からの呪いレベルなおシャイさんであるため、その後1年半にわたってひっそりと(しかし暑苦しく)想いを寄せる日々は続いた。

その間、彼女は長かった髪をばっさりとカットしてストレートボブにイメチェンした。くしくも私と似たような髪型になった彼女は、もう、それはもう、直視を躊躇わせるほどに輝いて見えた(ガン見したけど)。ド派手系ではないけれど上品な華やかさのある顔立ちにシンプルな髪型は文句なしに似合っており、部署のボーイズが褒めちぎる様を「クッッッソ!私も混ざりてぇ…!」とハンケチを噛みしめながら眺めつつ、私の恋心がますます大炎上したのは言うまでもない。


そんな私のひそかな片想い生活に、終止符が打たれたのが……出会いから1年半後のことである。


当時まだコロナという概念すらなかった2017年・秋。「ウキウキ!秋の忙殺☆キャンペーン」でぼろ雑巾のような日々を過ごしていた私は、その繁忙期のピークを迎えた日の夜、なんと彼女と密室で二人きりになる機会に恵まれた。


密室で二人きりになったんである。(大事なことなので復唱)


心優しき紳士淑女のみなさまならば、この時の私がどんな心境だったかお察しいただけましょうや。ソラモー緊張なんて言い方じゃ足りないくらいガチガチに緊張したけれど、それ以上にものすごくうれしかった。くしくも隣の部署同士で同じ繁忙期を闘ってきたこともあり、我が部署と彼女の部署の間にはなんというか、連帯感のような、戦友のような雰囲気が漂っていた時期でもあった。


今だ。今しかない。


「よかったら今度呑み行きません?」を言う、絶好のチャンス……!!



出走直前の競走馬並みに血圧を上げまくり、それゆえに生まれてしまった妙な沈黙はしかし、「あのさ、私ワカナさんにずっと言いたいことあってさ」という彼女の一言で破られた。



「フアッッッッッ!!!!!な、何でしょーか(まさか私が粘こく暑苦しくチラチラ見てんのバレててお叱りを受けるのではないの?えーどうしようなんてお詫びしたらいいの?!)」
「あのさー……私さ、ずっと髪長くしてたけど今こんな感じじゃん?」
「ッッッすね!あの、すごいお似合いです!(いつも見てます!!!)」
「えー、やー、ありがとねーw実はこれさー、ワカナさんの真似っこなんだよねーw」


…………は?



「ずっと長くしてたんだけど、短くしたくなってさ。そんでさあ、ワカナさんの髪型ずっといいなって思ってたんだよね……すごい似合っててかわいいし。それで真似させてもらっちゃったんだ、ごめんねなんかキモくて!でもホントすごくいいなって思ってたんだよね」



……………………マ?



「あ、あの…………」

「うん?」

「あの…………ずっと見てましたっていうかいつも見てます大好きです貴女が」



気づけば告白していた。



その後のやりとりについては長くなるので割愛するけれど、私はその日、1年半に渡ってあたためたぎらせ吉原炎上もかくやというほど燃え盛っていた想いの丈を彼女にぶちまけた。何しろひそかに片想いしていた相手が私を気にかけ、あまつさえ髪型をトレースしてくれたんですよ?!こんなことって……こんなことって……あります…………?!!!!!(思い出して震え)


ひと目見た瞬間、めちゃくちゃきれいだと思ったこと。声をかけたかったけれど勇気が出せなくて、ずっとひっそり見ていたこと。その後仕事上のやり取りから人柄に触れて、ますます好きになってしまったこと。気持ち悪いと思うかもしれないけど、笑顔を見るたびにすごく幸せな気持ちにしてもらってること。それを恋人に惚気まくっていること。いつかゆっくり話をしたいと思っていたこと。あわよくばお近づきになりたかったこと。

もう、洗いざらいぶちまけた。

彼女は驚いていたけれど(当たり前だ)、めちゃくちゃ照れながらも(それがまたもうバッチクソにかわゆくてかわゆくて震えた)喜んでくれた挙句、「私も実はワカナさんとゆっくり話してみたかったんだ……/////」という告白までしてくれて(告りですよねえ告りだよこんなの!!!)、あれよあれよと言う間に約束を交わし、それから数ヶ月に一度二人きりでしっぽり呑む関係になった。それは彼女が隣の部署から異動してしまった今でも続いている。


一緒に呑むようになってから分かったのだけれど、彼女と私にはいくつかの共通項がある。すなわち、七代続く一族の因縁レヴェルでコミュ障であり、友達付き合いは深く狭くがモットーであり、離婚の経験から一時は世をはかなんで頭髪を剃り落とそうと思った時期もあり、でもその後素晴らしいご縁に恵まれて現在は穏やかな日々を送っていたり、そこそこオタクだったり。

お互いにマメに連絡を取るタイプではないくせに、逢いたくて逢いたくて震えるタイミングが訪れる周期もなんか似通ってて、どちらかがどちらかに連絡すると「私もそう想ってた……/////」ってなることが本当に多い。


私みたいな鉈が似合うことで定評のある非モテ系とは違い、彼女は文句なしの美人OL系なので、親しくなる前はさぞやお友達も多く、キラキラ美人OLライフを満喫しているのだろうと思っていた。が、実際は「アッハッハー、私全然友達いないんだよー団体行動とかバチンコ苦手だよーw」ということだった。「会社の人と女子会とか絶対無理なんだけど、何でかね、ワカナとは(今や呼び捨てしてくれている。誉れの極み!!!)合いそうだな、仲良くなりたいなってずっと思ってた」そうだ。生きててよかった。



さて……(コホン)

まだまだ惚気足りないけれど、そろそろ本題に入ろう。



彼女……いや、「美の女神ミューズ」だからミューさんと表記させていただく。ミューさんのお宅では、いい季節になると旦那さまの意向でバーベ会を開催しているということは聞いていた。ちなみに旦那さまも同じ会社であり、面子は旦那さまが親しくしているわが社の男性陣で構成されているらしい。

コミュ障同士ゆえの気遣いでなかなか言い出せなかったけれど、ミューさんはずっと私を招きたいと思ってくれていたようで、先日「今度バーベ会来ない?」というお誘いをいただいた。くしくもこの時私は水族館デート中だったのだけれど、爆速で「何があっても行くよ!!!」と返信したのち、荒ぶる胸の内を恋人にぶちまけたのは言うまでもない。

恋人からは「ちゃんと勝負パンツ履いていけよ?別にそういうことにならなくたって、そういう機会に備えて己を高めることが大切なんだからね!」という熱い激励を賜ったので、当日はきちんと勝負パンツを履いて出かけた。最寄り駅まではミューさんがお迎えに来てくれた。


そもそもミューさんと逢えるのが半年以上ぶりな上、忙殺キャンペーンの後遺症でテンションはハイになっており、あまりよく知らない方たち(旦那さま関係者)とお会いすることへの緊張感もあり、しかしながら推しの私生活(ご自宅)を垣間見られるという現実を目前にしているわけで、最寄り駅に着いた時点で私のテンションは完全にカオス状態だった。休日用のラフな服装で現れたミューさんをひと目見た瞬間に全身に激震が走ったのは、もはや避けられない事態と言える。鼻血を出さなかった自分を心から褒めたたえたい。


ミューさん宅に着くと、「火起こしなんかは野郎どもがやってくれるから、とりあえず中へどうぞ」ということでおうちの中にお邪魔する。

ここですばらしい歓待を受けた。


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女神のお宅に天使……!


ここは天界ですか???



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そしてさらにもうお一方の天使……!


今やねこのしもべとして立派に調教されている私だけれど、元々はわんこ派であり、ねこと同じくらいわんこも大大大大大好きである。肉を食いにきたことを完全に忘れ去り、しばし天使たちと戯れるひとときを過ごした。

上はお姫さま、下は王子さまだ。お姫さまは大変に慈悲深く親しみやすいお人柄、じゃなかったお犬柄でスリスリペロペロしまくってくだすったけれど、王子さまは王族としての威厳と意識の高さ(警戒心)から、しばらくずっと「きさま、なにものであるか!ここをなんとこころえる!?」的なお言葉をあびせてくだすった。初めての謁見でそのおみ足への口づけをお許しくださる姫、ひっきりなしにお声(キャンキャンキャンキャン!!)をかけてくださる王子…………やはりここは天界であった


半刻ほどそのように過ごし、どういう心境の変化があったのかわからんけども突如王子から熱烈なキッス(舌をねじこまれる系)を賜るようになったくらいのタイミングで、お庭にいた殿方チームから「そろそろ乾杯しよう」と声がかかった。


ここでようやく他の面子にご挨拶をさせていただく。到着するなり家の中でわんこに全集中していた不届き者を、みなさんあたたかく迎えてくだすった。


事前にミューさんから「全部野郎どもがやってくれるから、ワカナは私とひたすら呑んで食べてればいい」と聞いてはいた。そうは言っても何かお手伝いのひとつも……と思っていたのだけれど、手出しする隙がまったく見当たらない。流れるように椅子に座らされ、酒を手渡され、おつまみの皿が目の前に置かれ、気がつくと宴が始まっていた。


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野郎どもによって手際よくお肉が焼かれ、いい塩梅になったところでお皿に自動供給される。手元の酒が空けばすかさず新しい缶が運ばれてくる。気候は快晴、吹き抜けるのはさわやかな秋の風。そして隣には、会社とはまたひと味違う、くつろいだ笑顔を浮かべた光り輝く存在が座っているのだ。手を伸ばせば、触れられる距離に。


これで酒が進まない理由なんてあります?いや、ない。


私とミューさんはぐいぐいと呑んではゲハゲハと笑い、お昼を回る頃には完全にできあがっていた。なので宴中の写真はほとんど撮れていません。それだけがこの日の心残りであります。本当は待ち受け用にミューさんと旦那さんのツーショットを撮らせてもらう腹づもりだったのに……(ハンケチ噛みしめ)


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ミューさんが前の晩に仕込んでいたという、牛すじと大根の煮込み。

うやうやしく掲げ持ち感謝の祈りを捧げてからいただいた。牛すじも大根もトロットロのしみっしみで、どちゃくそめちゃんこおーいしーい!かったです!!!!!


久しぶりに野外で呑むお酒は大層おいしかった。この日はミューさん、旦那さま、旦那さまのお友達である野郎ども4名、そして私、という面子で、言葉を交わすのはほぼ初めて、な方ばかりだったけれど、どいつもこいつもさわやかですてきなナイス・ガイであったため、いつの間にか緊張を忘れて大いに盛り上がっていた。

酒が進むにつれて「ワカナさんて結構近寄りがたいと思ってたけど、こんな面白い人なんスねー!職場とまるで別人じゃん!」みたいなことを、同席した全員(ミューさんは除く)に言われたため、日ごろの自分のパブリック・イメージが一体どういうことになっているのか若干不安になったけれど、まあよい。楽しいのだから全然よい。


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ミューさんのお義母さま(ご近所に住んでいる)から差し入れられたさつまいも。焼き上がる頃にはべろんべろんになっていたけれど、芋女のプライドをかけて撮影した。

芋を持っているのはこの日初対面だったメンバー。「いいよーかわいいよー色っぽいねー」等と声をかける私に、「じゃあもうちょっと足開いてみよっかー」等とノリノリで付き合ってくれた。ありがとうございます。


宴は日暮れ時まで続き、みんなでずいぶん色んな話をした。全員同じ会社の人間なので仕事の話題が多かったけれど、本当にすごく楽しかったし、心からくつろいで過ごさせてもらったと思う。何よりも、ミューさんと旦那さまの仲睦まじい様子を間近でみられたことが、この日いちばんの想い出だ。ほんとねー、すてきなカップルなんですよ……ふとした時に交わす視線にすら愛が溢れていてさ…………(恍惚)

ミューさんの旦那さまは185cmを越える長身&ちょっと凄みのある端整な顔立ちで、職場でたまにお見掛けしても気安く声をかけにくい雰囲気なのだけれど、この日はお互いに「いやー会社と全然違うんだねw」を連呼しながら、たくさんお話をさせてもらえたのもうれしかったな。楽しすぎて私がいかに彼の配偶者に心酔しているかを熱く語ってしまった気もするが、まあよい。


夏からずっと激務に追われ身も心もバキバキに強張っていたので、この日は心から寛ぎ、己を解き放つことができた1日だったと思う。少々解き放ちすぎた感も否めないが、よいよい。


「次回も必ず参加するように!もうレギュラーメンバーだからね!」と皆さんに言ってもらいながらタクシーに詰め込まれて帰路についた。


本当にすてきな1日でした。



なんだかずいぶんと長くなってしまいましたが、ここまでお付き合いくだすった紳士淑女の皆さま、ありがとうございました!









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