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朝の青春

ずっと話したい人だった。
久しぶりに見、初めて声をかけてくれた。
私はちゃんとありがとうを言えたのだろうか。

朝、いつも通り朝学講習に行こうとしていると、あ、と私の顔を見て彼は言った。
「今日、向こうの教室やって、図書館じゃないって」
驚いた。それはあるきっかけから数ヶ月前まで毎日DMで話していた野球部の彼であった。
その頃は互いに悩みを伝えたり愚痴を言ったり、誕生日を祝ったり、時には、ねぇ、話したいことがある。やっぱり言えない、なんにもない。というような甘酸っぱい青春のような会話もしていた。
しかし今、最後に私が送信したメッセージに返信はない。廊下で顔を合わせても挨拶なんてしない。気まずかった。
それが今日、声をかけて来たのだ。元々人見知りの私だが、そんな関係の彼に、どんな顔を向けていたのだろう。「おはよう、そうなんや、ありがとう」そう言った事しか覚えていない。目を合わせられていなかったと思う。それは私の中では“ちゃんと”したありがとうではないのだ。

彼は騒がしい野球部の中でも優しかった。今日、DMをしてみようか。また話したい。ちゃんとありがとうを言い、これからは笑顔で顔を合わせて話したいのだ。

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