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私がワクワクすることについて。

最近私がワクワクしたことは、11月7日に行われたWBSSバンダム級決勝の井上尚弥選手の試合だ。なので今回は個人的な感想を踏まえながら、今回の試合について書いていこうと思う。

WBSSとは?


WBSS(World Boxing Super Series)とはプロボクシングの統一戦トーナメントのことだ。出場資格はボクシング団体であるWBA、WBC、IBF、WBOのいずれかの世界王者、または世界ランキング15位以内の選手。このトーナメントで勝ち進んでいき、他団体の王者に勝つことができれば、その団体のベルトも貰うこともできる。よって、実質ボクシングで本当の世界一を決める戦いである。ルールは3分12ラウンドで、その間でKOまたは判定で勝敗を決める。このバンダム級トーナメント戦に日本からは井上尚弥選手が出場を決めた。

井上尚弥とはどんな人物か


6歳からボクシングを初め、現在26歳。神奈川県座間市出身で結婚もしており、2歳になる息子がいる。モンスターの異名を持ち、日本プロボクシング界歴代最強と名高い選手。戦歴はプロ16戦16勝14KOの無敗。世界三階級制覇したこともあり、アマチュア時代には日本ボクシング史上初めて高校生で7つのタイトルを獲得し、プロ転校後も8戦目での2階級制覇という国内最速記録を持っている。また、PFP(パウンド・フォー・パウンド)と呼ばれる異なる階級の選手を比較、対比するランキングでは、今年7月に2位に選ばれる等輝かしい経歴を持っている。トレーナーは自身の父親が担当し、弟の井上拓真選手もプロボクサーとして活躍している。夢は兄弟で世界チャンピオンになること。今回井上選手はWBAのバンダム級世界王者としてこのトーナメントに出場した。

井上選手の快進撃
一回戦、ファン・カルロス・パヤノ選手を1Rで下す。世界中から強者が集まる大会で1RKOという実力を見せつけたことで、世界に衝撃を走らせた。本人はこの出来事のことを後日テレビ番組で「ゾーンに入っていた。決まる瞬間がスローモーションに見えた。」と語っている。
準決勝の相手はIBFの世界王者であり、井上選手と同じく無敗を誇っていたエマヌエル・ロドリゲス選手。無敗同士事実上の決勝戦だと謳われた試合だったが、井上選手が2Rに3度のダウンを奪いTKO勝利。
そして、決勝戦は5階級制覇したこともあるフィリピンの英雄、ノニト・ドネア選手。ドネア選手は36歳(11月7日時点)で過去にIBF世界フライ級王座、WBA世界スーパーフライ級王座、WBC・WBO世界バンタム級王座、IBF・WBO世界スーパーバンタム級王座、WBA世界フェザー級スーパー王座を手にしている。アジア人として初めて主要4団体すべてで世界王者となった選手としても有名。今回ドネア選手は一回戦、ライアン・バーネットを4RTKO勝利、準決勝、ゾラニ・テテを6RKO勝利している。

WBSS決勝戦

さいたまスーパーアリーナで行われたWBSS決勝戦同日、井上選手の弟である井上拓真選手もWBC世界バンダム王座統一戦を行った。兄弟ダブル世界戦ということで会場も大いに盛り上がっていたが、4R相手の左フックが決まりダウンしてしまう。これが大きく採点に反映し判定で拓真選手が負けてしまった。試合前、勝って兄に繋げたいと話していたが、残念ながら同日に兄弟で世界チャンピオンになる夢は叶わなかった。

いよいよWBSS決勝戦、会場に両選手の名前が呼ばれると世界中から集まったファンが歓声を上げる。両選手共に前日の計量をクリアし、体調も万全だ。井上選手のトランクスには息子の名前が書かれており、観客席からは家族が見守っている。セコンドには井上選手の父親と所属ジムの仲間たちが控える。試合開始のゴングが鳴ると両者落ち着いた様子で攻防を始める。1R終わった時点で強さはほぼ互角に見えた。しかし2R、ドネア選手の左フックがクリーンヒットし、井上選手は右眉をカットしてしまう。井上選手にとってボクシング人生で初めてのカット。この時に右目眼窩底を骨折。もし傷がこれ以上開けばドクターストップで負けになりかねない。それを危惧してかガードを高く上げディフェンスに回ってしまい、なかなか相手にパンチが出せなくなってしまう。2R終了後セコンドにいた井上選手の父親は「余裕もつな」と声をかけるが、井上選手は「大丈夫」と落ち着いた表情を見せた。ここから両者共に激しいパンチの攻防が続く。井上選手のカウンターが決まれば、ドネア選手も負けじとカットして見えにくくなっている右目を狙ってパンチをくりだす。ドネア選手は経験豊富ではあるが、36歳というボクシングとしては下り坂になる年齢。それにもかかわらず井上選手と一進一退の攻防を繰り広げる様は、さすが5階級制覇のレジェンドだと感じた。お互いにダメージが蓄積され、井上選手の右目から出血が目立ってきている中、11R目で戦況が大きく変わる。井上選手が序盤から攻め込み、左ボディがドネア選手にクリーンヒット。ダウンを奪う。ドネア選手はなんとか立ち上がり試合続行するが、ボディのダメージからか手数が減り、一気に井上選手が優勢へ。しかし、必至にたたみかけるもドネア選手の強靱な精神力によりダウンは奪えず時間切れ。最終12Rにもつれ込んだ。12Rは両者激しい攻防を繰り広げ、井上選手はボディを狙い仕留めにいくが、ドネア選手もそれに耐えパンチを返していく。終盤にはドネア選手がラッシュで魅せ会場を沸かした。試合終了のゴングが鳴ると両選手抱き合い、壮絶な死闘を繰り広げたお互いの健闘を讃えた。その姿は涙を誘うものがあり、会場には拍手が鳴り止まなかった。

判定の結果

12Rが終わり判定の結果、3-0で井上選手の勝利。よってWBSSバンダム級チャンピオンは井上選手に決まった。井上選手は高らかに拳を上げ、その表情は勝利を噛み締めているようだった。試合後のインタビューでは、「ドネア選手めちゃくちゃ強かったです。初めてのカットという経験、2R目から正直ドネアが2人に見えていました。このような結果が出せたこと、自分の最大のキャリア、誇り、また来年から精進して頑張っていきたいと思っています。」と語っている。手に汗握る攻防、そして世界最高峰の技術のぶつかり合いを見せてくれた両選手は本当にすごかった。

今後の活動としては、まだ戦いたい相手がいると語り、しばらくはバンダム級を完全に制圧することに専念するそうだ。

今回の試合を見て感じたこと

今回の試合を見て、井上選手は精神力が本当に強い人だと感じた。後日井上選手は、「簡単に天才と言われる事がいやだ。そこにたどり着くまでのものっていうのは、何度も何度も繰り返し怒られながらやって、できないことを積み上げてやってきた結果。」と語っており、血と汗がにじむような努力の結果、WBSSでチャンピオンになることができたのだ。右目がほぼ見えないという危機的状況になっても、自分を信じ立ち向かうことができたのは強い精神力があってこそだと感じた。私も社会人になればきっと多くの失敗や挫折を味わうことになるかと思う。しかし、そのような状況に陥っても自分の今まで積み上げてきたことや、私を支えてくれた人を思い出し、自分を信じて乗り越えていこうと思った。そのためには今からその自信になるような努力を、日々積み重ねなければならない。そしていつか夢が叶うのならば、井上選手に会って、直接この感動と感謝を伝えられたらいい。




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