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成瀬はサイコー

前作「成瀬は天下を取りにいく」も最高だったけど、これまた最高に成瀬ファン度が上がるサイコーの5編だった。

最後の「探さないでください」に集結する成瀬ファン(になる人たち)が、4編それぞれで主人公になっている。

そしてどの編にも、どこか少し、不十分だったり、過剰だったり、不自由な、とても現代的な人たちが出てくる。あまりにも自分や自分の身の回りにいるつらそうにしている人たちと、パーツパーツでかぶる部分があり、キュンとなる。

周りを気にし過ぎる小学生

子離れできない父親(流行りに乗りたいYouTuber)

クレーマー体質の主婦

見映え優先の家族の中で自分に目覚めるインスタグラマー

そしてその人たちが、成瀬と出会うことで、最初はギョッとなり、やがて安心して虜になっていく。成瀬のおかげで救われる人たち。成瀬、ありがとう!

ここからは、本作とは離れた、クレームについてのことを書きます。

やめたいクレーマー

すごく実感を持って読むことができるのは、描かれてるディテールのリアリティなんだろうと思う。3編目の「やめたいクレーマー」などは特にそうだ。日常生活の中で時折感じる小さな苛立ちは、本当は、ただ単に自分の身勝手な願望や不快さから生まれたものなのに、それを正当化しようと、社会正義や常識に照らし合わせて批判しようとする。そういう義憤に駆られることは、とても多い。もちろん、それを声に出したり、ネットに書き込んだり、投書したりという表に出すかどうかは別として。

そういえば時々、新聞の投書欄に、こうしたクレームのようなものを見かけることがある。読むとあまり気持ちの良いものではない。書かれた対象にも問題はあるが、何より書き手が(新聞なので匿名でもないし)周りから評判が悪くならないかと心配になる。なぜこんなものを、わざわざ選出して載せるのだろう?と思っていたが、ここで吐き出してもらいましょう、ということなのかもしれないし、新聞紙に載った言葉の数々と、自分の実名を客観視して、気づくこともあるのかもしれない。

こうして書いてる私も、わざわざクレームをつける人たちのことについて、もっともらしいことをわざわざ書いてる節がある。

ホントは、なんかやだなぁ、という気持ちが湧いただけのことだ。

やめたい、もっともらしいことを言ったり書いたりすること。

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