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「あっ わかった!」そのスッキリこそが学習の推進力の正体。

こんなことがありました。

 生徒を日々教えていると色々なことに気が付きます。

 小学生の算数の指導をしていて一番よく気になることは、ドリル的な問題は好きになって次第にできるようになるのに、文章題になると別人のようになり「何をしたらいいかお手上げ」になってしまう生徒の多さです。

 実際、塾を訪れる小学生の保護者の方のご相談でも、「計算はできるのですが、文章題ができなくて」という相談は、圧倒的に多いと思います。

 ある時、新しい小学生が入塾してきました。

 彼は計算が得意で、次々に問題を解いていき正解していきます。そして「今度はこれ、次はこれ」という感じで先を急ぎます。解くのが楽しくて仕方がないという感じです。

 文章問題もだいたい準拠ワークに出ているものは、基本パターンそのままで解けてしまうものが多いので、半ば定型的に彼は解いていました。

 しかし、少し聞き方が変わった途端に急に動きが止まりました。

問題はこんな感じでした。

 A君のクラスでは、男子と女子の人数の比は4:5です。クラス全体の人数が45人だとして、男子の人数は何人でしょうか。

「先生、男子と女子の人数がどちらも出ていないので解けません」と彼は言い、それ以上先へ進むことを放棄してしまいました。というかそれ以上考えようとしないのです。

 詳細については省きますが、それまでは、たとえば4:5で女子は25人、では男子は何人?という聞き方ばかりだったので、こういう聞き方をされると、何をどうしたらよいのかわからなくなってしまったのです。

 もちろんこういう場合には、分数を使うことや全体を分けて比の数字を合計するやり方などを図を描いて丁寧に説明することで、次第にわかるようになります。

でも手掛かりがあっても、自分の中には入ってない情報だと感じた瞬間に、そこで考えることをギブアップしてしまうという生徒が実は多いのです。

 「自分で一度考えてみる」という、ほんのわずかな一歩がどうしても進めないという感じです。

 たとえばゲームであれば、とりあえずやり方が違っていてもあれこれ試して、そして間違って戻って、やり直してと言うことを繰り返すことができるのに、勉強になると、不思議にそういうことをせず「教えてくれるはず」という意識になってしまって、思考を止めてしまうと言ったらわかりやすいかもしれません。

 比の問題の応用などは、あれこれ自分で図を描いているうちに「あっ。わかった」となる可能性がきわめて高く、思考力や発想力をアップするにはうってつけの題材です。

そういう状態にならずに、すべて手取り足取り教わって次へ進んでいくというのは、先々へ向けては誠に残念な気がします。チャンスを捨てていると言っても過言ではありません。

 小学生の時期は、今後の長い学習生活へ向けてのいわば推進力をつける時期なので、目先の事よりもこういう場合に「自分で考えてみよう」という意識づけをしていくことが重要だと思います。

 だから私たちは、こういう場合には少し時間がかかっても、一度あれこれ自分で考えて答えを出してみてもらうようにしています。

全くお手上げな場合には、図の書き方をアドバイスしてそこから先どう考えるのかを見る形で、練習をさせることもあります。

やり方を全部「こうだよ」と教えてしまうのは簡単ですが、それではなかなか学習への推進力である「考える力」が伸びてこないからです。  

算数を嫌いにさせる要因

 小学生が算数を勉強していて、苦手意識を持ったり、嫌いになってしまうポイントというものがあります。
 それは「割合」や「通分」のように、それまでより複雑な内容を学習する場合が多いのですが、時に、計算中心のドリル的な学習というものが、算数というものを機械的なものだと生徒に思い込ませてしまうことも苦手意識を作ることへの一因があるかもしれません。

 もちろん単純な計算問題は、できるようになれば達成感があり、自分ができるようになっていく過程がわかりやすいので、上手く活用すれば算数の実力養成には効果的であることは明らかです。

 でも計算に力を入れ過ぎて、考えることを軽視する学習をしてしまうと、文章題になると全く対応できなくなってしまうこともよくあります。

何より「考える楽しさ」を味わえず、算数がつまらなくなる要因にもなりかねません。

単純な規則性の問題でも、生徒は好奇心の塊になる 

 計算問題や教科書に出てくる文章題を離れて、規則性の問題を生徒に紹介することがあります。 

好奇心を取り戻すのに効果的なため、時に行うことがあるのですが、生徒は想像以上に興味を持ってくれます。

たとえば 1, 4, 9, ▢, ▢, 36 … ▢に入る数字を答えなさい。というような問題です。(答えは16,25) 

 こういう規則性の問題は、中学入試などでは定番で出題されますが、小学校の通常の指導ではそんなには取り上げられません。

中学でもそんなに学習をしないジャンルですが、高校受験では新傾向問題などと言われよく聞かれます。

 このタイプの問題は「考える楽しさ」を味わうのに絶好のテーマなので、できれば受験とかには使って欲しくない気がします。

 ただ、その先の高等数学を学ぶ段階になると、これはいろんな面でかなり役に立つことになります。数列や行列だけでなく高次の関数の学習などでもここでの発想法が効いてきます。

 そうなんです。勉強と言うのは長いスパンで見たときにつながってくるものなのです。目先の得点ばかり気にしてしまうのは、少なくとも小学校の時期には避けたいです。

このタイプの問題の難易度はいくらでも調整できます。

2, 3, 5, 8, 12, ▢, 23 … などというだけで、ちょっと難しくなります。(答えは17 間の数の変化に注目してください)

 どうでしょうか。結構楽しいのではありませんか。

 小学生くらいの時期にこういう問題を目を輝かせて解いていくと、本当に数的な能力が伸びるように思います。

だから、もし学校でやらないとしても、ご家庭でやることをお勧めしたい学習だと思います。今はアプリなどでもいいものがありますのでそれを利用するのもいいですね。

発想力を鍛える問題

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 算数というよりも思考力のテストとして相当有名な問題ですが、「スイレンの葉の問題」というのがあります。


 あるスイレンの葉は生命力があって、毎日2倍に増えていきます。ある日に葉が4枚であれば翌日は8枚、その次の日は16枚というように倍々と増えていきます。繁殖を始めて48日後に池の全面をスイレンの葉が覆ってしまいました。このスイレンの葉が、池のちょうど半分の面積まで池を覆ってしまうのは、繁殖を始めて何日後になるか答えなさい。

こんな問題です。生徒にこの問題の話をすると、一生懸命に生徒は計算をしようとします。 

 まず最初に出てくる多数の答えは「24日後」というものです。

 授業の場合だと、大抵この日数には反論が出ます。「真ん中はおかしいよ」とか「そんな簡単じゃない」というような意見が飛び交います。

生徒間で話し合わせると、この問題はかなり興味深い意見がたくさんでてきます。そんなときの生徒たちの表情は、大変生き生きとしています。学校の先生は授業でやってみるのもいいと思いますよ。

 いわばクイズのようなものなので当然かもしれませんが、こういう思考力を試す問題こそ、本当は学習において重要な要素を持っているのかも知れません。 

 正解は「47日目」です。

 繁殖を始めたスタートの方から考えていくと、正解は出せませんが、全面を覆った48日目から逆に考えれば一瞬で正解にたどり着きます。

一言で言えば、発想力を試す問題だと言えます。過去に相当多くの小学生・中学生・高校生にこの問題を出してみましたが、時間制限をかけて答えさせたことも影響してか、私の指導した生徒の中では一発で正解を言い当てた生徒は過去に2人しかいませんでした。 

 それくらい柔軟な発想力というのは得難いものだということになるでしょうか。ちなみにその正解者のうちの1人は、後に東大に合格しています。

 勉強というものは「わかる楽しさ」があれば、どんなに難しい内容になってもその推進力を失わずやっていけるものだと思います。

 しかし、一旦ルーティンな片付け仕事になってしまえば、推進力は失われてしまうことがあります。興味を持って取り組めることは、学校の勉強の外にあることも多いです

 少し視野を広げて「考える楽しさ」を味わうようにすることが、先々へ向けては大きな効果を生むことがあると思います。

 特に小学生くらいの学習では、目の前のテストの得点に一喜一憂することよりも、長期的な展望を持って学習と言うものを考えていくことが重要です。

 好奇心を広く持ち、考える楽しさを良く知る生徒は、必ず後に伸びてきます。焦らずそういう視点を持って、お子さんの学習を見つめてあげてください。

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