キャラバンブーマー「Arrhythmia Syndrome」ライナーノーツ

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改版履歴
2024/1/30 「S.E.mix」の章と、体調に関する現時点の補足を追記
2021/4/18 「はじめに」追加、記事中に一部補足説明追記

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はじめに

このnoteは、MSX2用シューティングゲーム「キャラバンブーマー」に提供した拙曲「Arrhythmia Syndrome (Stage 9)」が出来るまでの詳細な過程と、その間に起きた出来事等々について書き連ねています。

「キャラバンブーマー」は、サウンドトラックCDがリリースされています。 未聴の方はまずそちらをお聴きになるのが手っ取り早いかと思います。 

そもそもの話、「Wiz.って誰やねん?」という方は、note別記事に自己紹介も書いてますので、そちらもご覧いただけますと幸いです。

…んで。 「キャラバンブーマー サウンドトラック」では、残念ながらブックレットにライナーノーツを書く機会を戴けませんでした。 ゲームミュージックサントラCDでは、割とライナーノーツを楽しみにしている派なので、書きたいことは多々あるにも関わらず、ライナーノーツが書けないのは非常に遺憾!

…ということで、逆にブックレットに入らないのなら、Webにライナーノーツを書けば文字数制限無しに好きなだけ書けるのでは?という逆転の発想で本note(セルフライナーノーツ)を起こした次第です。
(※他の方の楽曲も、是非セルフライナーノーツを拝見したく存じます。 ご連絡いただけましたら、本ページからリンクさせていただきますので、ご連絡ください>関係各位)

なお、本記事は自称「(単曲では)業界一長いセルフライナーノーツ」を目指してますので、それなりに分量があります。 お時間のある時に少しづつご覧いただけますと幸いです。

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キャラバンブーマーとは何か?

令和二年(2020年)秋に「キャラバンブーマー」という「MSX2用新作シューティングゲーム(!)」がリリースされました。(※一般流通ではなく、海外の同人ソフトのようです)

そもそもの話、MSX2用の新作STGが現代にリリースされること自体が物凄いんです! それは何故か…? MSX2ってのは、なんと1985年にリリースされたホビーパソコン。 これを書いてる時点(2021年4月)から数えて、36年前にリリースされたパソコンの新作ソフトなんです!

色々あって、拙者もこのソフトに1曲提供させていただいております。

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キャラバンブーマーの作曲陣

令和にもなってMSX2用新作STGがリリースされる時点でも十分凄いわけですが、このゲームの楽曲を書いているコンポーザの皆様が物凄くてですね。 知る人ぞ知る、ゲームミュージック・Chiptune界のレジェンド級の方々が揃い踏みなんです。

以下、コンポーザとして名前が出ている皆様です。
(※敬称略。カッコ内は代表作 or 活動の一部です。認識違いや抜け、不適切な表現があれば直しますのでご連絡を!)

ゲームミュージック方面
細江慎治(ドラゴンスピリット、リッジレーサーシリーズ等)
中潟憲雄(源平討魔伝、サンダーセプター等)
ヨナオケイシ(マッドストーカー、あすか120%等)
安井洋介(まもるクンは呪われてしまった!、エスカトス等)

Chiptune方面
hally(日本にChiptuneを広めたVORC主宰。作品・著書多数)
なると(MSX・FAN付録ディスクBGM、Famicompo mini「AI Bomb」等)
Tanikugu(MIDI縛りChiptuneコンピ「MIDINIZE」主宰。作品多数)
maak(各種環境に精通する職人。今回、一部楽曲コンバートも担当)
Shnabubula(主にNES/SNES使いの米国人。固定観念を覆す自由な作風)
Tobokegao(ポップな曲が持ち味のGB使い。Chiptune動向監視係)
Naoki Ito(本ゲームのプログラマ。一部作曲も担当)
Wiz.(30年以上前からMSX/98/FC等で曲を作ってる素人

…おい、なんか素人が一人混ざってるぞ。 どういう事だw<拙者

それはともかくとして、これだけ豪華な作曲陣が集まって、サントラが出ないわけがありません! (たぶん)SuperSweepの細江さんも絡んでいるということで、無事にSweepRecordさんからサントラ発売の運びとなりました。


以下、拙作曲「Arrythmia Syndrome」(Stage 9)に関して、だいたい時系列順に楽曲の制作過程等を遺しておきます。

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ファーストコンタクト

拙者のもとに、ある日突然海外からとおぼしきメールが届きました。

私たちはMSX2用の新しいゲームを開発しており、ミュージシャンが必要です。興味がありますか?

これが全ての始まりでした。 メールの日付を確認してみると…なんと、2018年9月! 現時点(2021年4月上旬)から逆算すると、2年半前(ゲームリリース時期から逆算すると約2年前)の出来事でした。(※この時にメールをくださったのが、開発メンバーのお一人である「BO DSGN」氏と後から判明)

この時、拙者は特に本業が多忙かつうまくいってない時期で、自分が運営するサークル「FMPSG」でさえ、新譜を出すのもままならない状況だったので、「全曲は無理ですが、1~2曲であれば」という感じでお返事をしたのが最初だったと思います。

その後、詳細条件を確認してみると、以下のような感じでした。

ドライバはMGSDRV(やった!普段使ってる!)
・音源はOPLL+PSG固定、かつPSG1chはSEでリザーブ
・現時点ではゲームが出来ておらず、キービジュアルを数枚送付
・作っているゲームはMSX2実機動作のシューティングゲーム
キーワードは「ホラー」

トラサビさん案件の時は、先にゲームが出来ていて後から「これに合う曲書いて」って感じの依頼だったので、「動いていない画面から想像を膨らませる」というのは、ゲームのBGMでは初経験だったのですが、過去に写真をイメージに作曲したこともあったので、なんとかなるであろう…という事で、コンセプトを固めていきました。

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コンセプティング=曲名

拙者が曲を作る場合に、だいたい最初に考えるのは曲名です。
曲名からイメージを膨らませていきます。(たまに明後日の方向に行くこともありますが、それはそれで…w)

今回、ゲームは事前にプレイできませんでしたが、重要なキーワードが2つ出てきました。

・シューティングゲーム
・ホラー

この2つのキーワードと、キービジュアル(開発中画面のボスキャラだと思います)を見ながらコンセプトを固めていきます。

拙者がゲームの曲を作る場合、コンセプトは大抵以下のどちらかです。

・プレイヤーがその場面に出くわした際の心情
・現在の場面を客観的に俯瞰した曲

今回は、より強くプレイヤーの印象に刻むために、主に前者で作ることに。

タイトルは、以下の思考連鎖から考えました。

シューティングでホラー
 ↓
異形かつ強大な的に立ち向かうプレイヤー
 ↓
強敵を前にした極限の緊張状態
 ↓
心拍数が上がり、脈拍が狂いだす
 ↓
不整脈!!

というわけで、タイトルの一部「Arrhythmia(=不整脈)」が浮かびました。 その後に「Syndrome(症候群)」という単語を追加した理由は2つあります。

・ミスをして何度も立ち向かう=繰り返し=症候群
・異形の敵から真っ先に想像した
 「Alien Syndrome」(セガのゲーム)のオマージュ

…まぁ、お察しの通り後者の割合が大きいわけですが。
ちなみに、ググるとどうも文法的には「Arrhythmic」「Syndromes」のほうが正確っぽい?んですが、語感が「Alien Syndrome」に近いので敢えて「Arrhythmia Syndrome」のままにしてます。

…余談ですが、(自分でタイトル付けといてなんですが)「Arrhythmia」という単語が非常に間違いやすく、自分でも「…あれ?「r」って何個だっけ?」「「h」付くんだっけ?」「「y」何処に付けるの?」とかなってる始末です…ちょっとだけ後悔しましたw

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曲の展開(イントロ篇)

続いて、脳内で曲の展開を考えつつ、MGSDRVのMMLに起こしていきます。

先ほど書いたコンセプト「異形かつ強大な的に立ち向かうプレイヤー」が「強敵を前にした極限の緊張状態」によって「心拍数が上がり、脈拍が狂いだす」という部分をまずはイントロでじっくり聴かせよう…と考えました。

ここでの脳内キーワードは以下です。

・不協和音
・プレイヤーの心臓の鼓動
・途中から鼓動が狂いだす
・最後は鼓動が乱れ打ち状態になって激しい展開へ
・死と隣り合わせの恐怖

まずは不協和音。 拙者はオタマジャクシ(基本的な譜面)程度は読めるものの、音楽理論を知らない(コードは読めない)程度の音楽知識ですので、和音を作るときは実践しかありません。 MIDIキーボードをPCに繋いで、ひたすら音を鳴らしてイメージに近づけていきます。 ここは完全に感覚的な微調整になります。 「ここにこの音を入れると不安定感が増すな」とか「緊張感を増加させるためにこの音は外せないな」とか、1音1音を紡いでいく感覚で和音を作っていきます。

続いて、心臓の鼓動。 これはPSGで昔似たようなSEを作った記憶があるので、さほど迷いませんでした。 鼓動の狂わせ方も、割と感覚的な調整で。 一旦ざざっと打ち込んだ後、「ここもうちょい長め」とか「ここは転んで連発させたほうが良い」とか、「最後は乱れ打ちで隙間が無くなってメインフレーズへ」とか…そんな感じで作ってます。

もう1個。 冒頭からPSGで鳴ってる甲高い「ピー」って音。 これはMSX2が壊れてるわけじゃありませんよ? バグではなく仕様です。 これは、よくドラマなんかで目にする「脈拍計が止まった(=息を引き取った)時の警告音」を模しています。 実際の心臓の鼓動は聴こえていてどんどん心拍数が上がってるのに、その真逆の音が入っているのは、「プレイヤーが『死』を意識している状態」を暗示しているんですね。 「作戦に失敗したら、待っているのは死」…という極限状態を表すために入れた音です。

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曲の展開(メインフレーズ篇)

ここは、キービジュアルを見た瞬間から決めてました。

コナミ or ナムコSTGのラスボス曲のように、狂ったように音が動きまくる感じ!

但し、拙者が作るので、もう1個アイデンティティを付けておきたい…というわけで、不定拍子! これも意識してます。

現代のDAWや譜面・ピアノロール入力ソフト、トラッカー等しかいじった事の無い方にとっては不思議なのかもしれませんが、MGSDRVのようなMMLテキスト型シーケンサの場合、(一部を除いて)拍子・小節という概念が存在しません。 一定の拍子で作りたい場合、これがパート間のズレの原因等々になりやすい反面、「ちょっとココだけ一拍長くしとくか」みたいな調整が楽にできます。 それは、変更するときに元々拍子や小節設定をいじる必要が無いから。 いやー、楽ですねぇ。MML万歳!…というのが、未だに拙者がMMLを使う理由の1つでもあります。

…とまぁ、ここまでは大雑把に脳内シミュレーションしていたものの、実際に作りだすとこれがまー難産でして。 ちょうど、この時期はお仕事が多忙で、体力的にも精神的にも参ってた時期でした。

そんな時期、かつ(元々同人ソフトという性質もあり)幸いに締切も徐々に延びていったものの、楽曲の制作もなかなか進みませんでした。 そんな中、Webサイトには著名なレジェンド級コンポーザが続々と追加されていきリストが増える度にgkbrする拙者なのでした…

そして、2019年秋~2020年春あたりがデッドラインになった頃、ようやく重い腰を上げてこの部分を一気に作り上げた記憶があるんです…が、これも一筋縄ではいかず。 メインパートの後半は、途中まで作ったのを「和音展開のアツさがイマイチ足りない!」と感じて、一度まるっと破棄して作りなおしたのが現在のバージョンの元になっているものです。

2021/4/18追記:
拙者の脳内ではラスボス曲っぽいイメージなんですが、具体的な元ネタは思い浮かばず…(※思い出したら追記します)
いくつかのSTG/RPGのボス曲に影響を受けてるのかなー?とは考えているのですが、どちらかというとメロディではなく、それらの後ろで素早く動いてるバッキングシーケンスのほうに影響を受けているのかもしれません。 この部分がボス系楽曲の共通要素っぽいので、「いっそのことコレをメロディにしちゃえ!」って感じだった…のかも? あとは不安感を煽る和音展開…かなぁ。
この手の曲調は、拙者の中では「パニック・ミュージック」という分類をしてます。 拙曲ですと、例えば商用作品「ペンゴ!」「ペンゴ!オンライン」対戦モードの後半曲は、いずれも「パニック・ミュージック」です。

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曲の展開(ディストーションギター篇)

メインフレーズをペロペロと鳴らしてるだけだと面白くないので、何処かで区切りとしてハッとする展開を入れたいな…と思って、持ち出したのがディストーションギターです。 OPLL(MSX標準となったFM音源。もしかすると「FM-PACに付いてる音源」と云ったほうが判り易いかも)の特性として、「他のFM音源と比べると歪み系音色が出しづらい」ことが挙げられます。 ここにディストーションギターの歪み音色を入れておくと、他曲との差別化が出来るかな…という思惑もありました。

2021/04/18追記:
OPLというと、東亜プランや日本物産のFM音源(OPL2)で、ギャンギャンした金属音が鳴ってるのを思い出す方も多いかと思いますが、MSX用FM音源「OPLL」はスペックが違ってまして。 OPLLは基本波形が正弦波固定(※半波整流という機能で若干歪ませるのは可能)、かつ自作音色が同時1種類しか使えない…という制限があります。 特に後者が大きく、自作音色以外のパートはプリセット音から選ぶしか無いのですが、歪み系や鋭い金属音はほぼ無く、これらと合わせると曲全体の発音が柔らかくなってしまうのです。(逆に、そこがOPLLの持ち味でもありますが)

ところが! この音色が物凄くピーキーでして。 結局、最終バージョンで使ったのは、25年ほど前にMSX-BASICで作った曲から移植した音色でした。 最初は、この音色を基にパラメータをいじる…はずだったんですが、とにかくピーキーで。 TLやFBなどのパラメータを「1」いじるだけで、「シンセブラス⇔ディストーションギター⇔ノイズ」と音色の方向性が全く変わってしまうレベル。 結局、これ以上いじるのは断念し、リズム隊以外をぜんぶディストーションギター音色にして重ねる事でアイデンティティを確保する、という方向に落ち着きました。

…っていう作業をやってて、25年前にこの音色を作った時も、全く同じことで悩んだのを思い出しましたw 当初から(この方向性では)これ以上いじりようがなく、ある意味完成された音色だったのかもしれません。

しかし、「キャラバンブーマー」サントラのなるとさんの曲を聴いてると、拙者とは違う方向性でディストーションギターを表現してて「あー、こういう方向性で音が作れるのか…すげぇ!」と純粋に驚いたのでした。(歪ませではなく、低音強めで存在感を出す手法)

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曲の展開(ラスト:無我の境地篇)

最初に書いておきます。 最後の曲調がゆったりした展開になる部分、拙者が大好きな「SUPER大戦略(メガドライブ版)」の曲「Out All」のオマージュですw 拙曲「Arrhythmia Syndrome」でも「Out All」と同様、ラストの展開をゆったりした曲調にしています。

「Out All」は、恐らく「戦争の後に残る虚無感」「全てが喪われた世界」を表現しているのではないか…と勝手に想像しています。

しかし、「Arrhythmia Syndrome」のこのパートのテーマは「戦争後の世界」ではなく、直前のディストーションギターパートで「緊張感がMAXに達したプレイヤーが気を失った直後の心象風景」というイメージで作っています。

具体的には以下のキーワードを念頭に作りました。

・生と死の狭間
・気を失って戦いから解放された(と誤認している)
・一瞬の安堵感
・直前の記憶は無く、天から無数の羽根が降り注いでいる
・自身の心象風景なので、現実ではなく少し歪んでいる

ここはある意味この曲のハイライトで、かなり丁寧に作った記憶があります。 メロや和音の進行がところどころずれているのは「空想による歪み」「生と死の狭間の世界」を、PSGがふわふわ動いているのは、「無数に降り注ぐ羽根」を表現しています。 …最初は、もっと構成音をずらしていて「歪んだ世界」寄りの表現を試みたのですが、単に音痴にしか聴こえないので、少々ノーマル寄りに戻しました。 このパートは、最後のピッチベンドからAメロにループすることで、再び気を取り戻して現実の戦闘世界に戻される…という感じの繋ぎにしています。

テクニック的な話をすると、このパート(とイントロ)はテンポが下がってるように聴こえますが、実は曲中で一度もテンポは変えてません。 これは意図的なトリックで、1拍の尺を取る基準を、メインは16分音符x4で1拍としているのを、ラストは2分音符x1を1拍x3音で1小節(=3/2拍子)にしているわけです。 こうしたのは理由がありまして…MGSDRVは、曲中にテンポチェンジをするとメモリをバカ喰いしちゃうんですよ。 今回はゲーム組み込みが前提だったので、曲中のテンポチェンジはやらない、というのを最初っから決めていたのです。

…余談ですが、最後に再びテンポが落ちるため、サントラ化の時にSuperSweepさんがラストのテンポが落ちる地点をループポイントと誤認してしまい、最初のマスターでは2ループ入ってない…という事がw(※リリース直前に直して戴きました…お手数をお掛けしました)

2021/4/18追記:
そもそも、「気を失って、生と死の狭間で無数の羽根が降ってきて安堵する心象風景」というのを何処から思いついたのか?…というのを考えていたのですが、恐らく最初に影響を受けたのは、ダライアスのメインテーマ「CHAOS」について、何処かで見た作曲者OGR御大(現:小倉久佳音画制作所)の記事だと気づきました。 この曲のキーワードは「宇宙空間に降る雪」である、と。 現実にはあり得ないこのキーワードが楽曲で正確に表現されていて衝撃を受けたのが最初なのではないか?と思います。(曲間の静寂の中でヒラヒラと動くシーケンスパターンですね…拙曲ではPSGで表現しています。ちなみに一番メモリを喰ったのがココです)
本作で、雪ではなく「羽根」になっているのは、間違いなく「カラス(Karous)」のキービジュアルが影響していると思います。(曲が凄く好きなんです…ゲームもかなりプレイしていました)
もう1作、「曲の終盤で静かになる」という部分は、最初に書いた「Out All」以外にレイストームの「SLAUGHTER HOUR」のラストにも影響を受けている…かも?(この曲を作っていた当時によく聴いていた記憶)
あと、全体シチュエーションは、やはりアニメ「フランダースの犬」の有名なラストシーンではないか?とは思ってます。 羽根=天使の羽根=お迎えが来た=死の予兆…という。

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リアル「不整脈症候群」

楽曲も9割がた出来て、あとは微調整だけ…となった2020年6月上旬、拙者の身体に異変が。 歩くとどうも息切れが激しい…胸も苦しい。 発症したのが金曜夜で、一旦は寝たんですが、土曜になっても回復せず、脂汗が出てきて意識が飛びそうに。

ちょうど新型コロナウィルスが猛威を振るっていた頃(コレ書いてる今もそうですが)で、「もしかして、新型コロナウィルスに罹った??」と思い、BO DSGN氏に「COVIDだったら暫く戻れないと思うので、未完成ですが一旦データを送ります」と、作りかけのデータを送付。

その後、病院に行こうと思ったのですが…まぁこれが大変で。 コロナ専用電話に相談するも、30分くらい繋がらず。 やっと繋がったと思ったら、「持病の薬の副作用とかも考えられるので、一度行きつけの病院に相談してください」との事。 んで、その病院に確認したんですが、「今処方している薬や病気では、その症状は出ないはずなので、まずはお近くの病院を受診してください」となり、次は我が家の近所の行きつけの病院に電話すると「今はこんなご時世ですので、コロナ相談センターに電話を…」と、絵に描いたようなたらい回し状態にw 「そこ、さっき電話して、最終的にここ紹介されたんですが…」と話すと、「…少々お待ちください」となって、保留音のまま待つこと10分。 「とりあえずウチで診ますので、ご来院くださったらお電話ください」ということで、なんとか徒歩で病院へ。

到着して電話すると、数分して防護服とマスクとフェイスシールドで完全防備した方に出迎えられて、裏口から別室へ。 そこで一通り検査を受けたんですが、そこで主治医から出た言葉が「コロナじゃないと思うけど、心臓の値がマズイね…」と。 別の意味でざわめく院内。 「うちじゃ診られないから転院しますね」ということで、その場で救急車が呼ばれ、もう1つの行きつけの大学病院に救急搬送されたのでした。(生まれて初めて救急車乗りましたが…これがもー乗り心地最悪。 ストレッチャー経由でアスファルトの凹凸がダイレクトに身体に響きます。 横断歩道とか「ガンガンガン」って頭にダイレクトに衝撃が来る…もう乗りたくねぇ!

大学病院に着くと、すぐに手術室に搬送。 全身素っ裸にされ(寒かった…)、説明を受け(よく覚えてない)、同意書にサインをし、尿管カテーテルを無理やり突っ込まれて(これが死ぬほど痛い!!!)、たぶん手首から心臓にもカテーテルを突っ込まれました。 何が何だか判らないまま、カテーテルで狭窄部分を開放→ステント挿入(血管を広げたまま固定する網みたいなやつ)され、手術は無事終了しました。

診断結果は、「99%心筋梗塞手前の不安定狭心症」。 遅かったら、心臓にダメージが残って、命を落としてたか、障害が残っていたかもしれない…との事。 幸いにも、処置が早かったので、1泊2日で退院できました。

手術後は、実際に拙者の心臓の状態(処置前と処置後)の映像を見せていただき、退院後はこれを参考に拙曲の心臓の鼓動音が少しだけリアルになったとかならないとか…w

手術時および入院中は、常に心臓に電極が貼られ、心電図で監視されていたので、「不整脈症候群という曲を作ったら、自身が心電図で監視された」という、身体を張った豪快なオチが付いたのでしたw(皆さん、身体は大切にしましょう…)

2024/1/30追記:
転職してストレスが減ったせいか、今のところ体調は安定してます。
歳のせいか、老眼になったり腰ヤラれたり、細かいところはガタがきてますが、今のところクリティカルな問題は無さそうです。

2021/4/18時点:
今のところ、心臓の定期健診では大きな異常は見つかっていないものの、最近動悸が激しい事が増えました…ついでに先日、腎臓系の値も悪化しているという事も判ったり。 正直、あと何年生きられるのか自信も無いので、今のうちに書ける事は全部書いておこう…というのが、本noteを作成した理由の1つでもあります。


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メモリ制限4KBとの闘い

退院後に楽曲の微調整も完了し、無事に納品できた…と思ったら、ここで思いがけない連絡が。

・楽曲データは4KBまでしか入りません!

その時点で、拙曲のデータサイズを見たら、約11KB…ここから7KBも削らないといけないのです。 うぉー、マジか!!!

データを削るにあたり、実験的に入れててあまり効果の無かった「yコマンドによるリズム音階の細かい変化」をまず(最初の1発を除いて)まるっと削りました。 これで約4KB削減。

「これはイケるぞ!」と思ったのも束の間。 ここから先が本当の地獄でした。

何やってもメモリ減らねぇー!!!

そこから先は試行錯誤の繰り返しです。 試せることは何でも試しました。 「qコマンドを減らす」「リズムのアタックトリガを減らす」「リピートコマンドの増減」「楽曲シーケンスの簡略化」等々…しかし、どうしても4KB(4096B)に届かない!

最後は、断腸の思いでディレイやバッキング等の目立たない裏方chを2.5chほど削り、無理やり4KBに収めたのでした。

噂には聴いてましたが、昭和~平成の楽曲データメモリ攻防戦を、令和の時代に自分が体験することになろうとは…! 貴重な経験をさせて戴きました。

「キャラバンブーマー サウンドトラック」では、ゲームに使われた4KBバージョンに加えて、メモリを削る前のバージョン+PSGドラム1chを加えた「FULLch ver.+」も収録して戴いてます。 極力、違和感の無いようにデータ量を削りはしましたが、その違いなんかを比べてみるのも面白いかと思います。 まだサントラをお持ちでない方は是非!!

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配信・サブスク版追加曲「S.E.mix」

すっかり書き忘れてたので今更追記です。

物理盤(サントラCD)発売の数か月後に、各種配信プラットフォームにて「キャラバンブーマー」のサントラが聴けるようになったんですが、実は拙者の曲が1曲増えてます。

色々あったので詳細は割愛しますが、思い出しながらざっくりと。
(追記が遅いので詳細忘れちゃったよ…)

  • 削ぎ落とす前の楽曲データを、実機で1chづつパラで録音する

  • 各chのwavをDAWソフトで1曲に合成

  • その際に、実機では不可能な細かいステレオパンを振る

という方針でデータを用意していたのですが、当方の体調と機材の不調等もあり、CD収録に間に合いませんでした。

…が! 後日サブスク配信するので、収録できなかった曲は配信で補完しましょう!ということになりまして。
締め切り後にステレオパンニングの編集を行って追納したのが「S.E.mix」です。

「S.E.mix」という名前はダブルミーニングになっています。

  • 「Stereo Enhanced mix」の略

    • EGG MUSICさんでやられていた、ファミコンのモノラル音源をch毎にパンニング処理してステレオ音源化する、という試みに倣って

  • (当時)IT業界のSystemEngineerだったので、「SEがmixしました」の略

…にしても、曲名長すぎ。
コレも「S.E.」という略称にした理由の一つかもしれません。(忘れた

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