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日付短編小説 2024/06/12  恋人の日 児童労働反対 第一話

この小説は日付にある○○の日というのを使った小説です。今回の題材は6/12の児童労働世界反対の日と恋人の日。最近、まだタイピングが遅いと知ったので、日ごと更新は無理かもしれません。ご了承ください。

〇プロローグ
 現役女子高生の花蓮密(かれんみつ)。私の両親から貰った名前である。
 人生で最も輝かしい青春を過ごせる時代、それが高校生だとは言われるがそんな事はない。
 何故なら両親もいないし、身内にも嫌われている高校生活を過ごしているからだ。
 ここまで不憫な青春時代を過ごすのは私だけだろう……とは思わないが、とにかく楽しくない。

「あー今日もバイトかぁ。面倒くさいけど今月の電気代も早く払わないといけないしなぁ」

 もちろん一人暮らしであるから、高校生ながらもアルバイトで賃貸金諸々を賄っている。

「はやくカフェに行こー。甘いもの飲みたーい」
「待ってぇ。あー、宿題やりたくない」

 こんな会話にも参加できない高校生活、ましてやバイト先でも孤独な日々を過ごしている。
 それ加えて思考や身体的な能力が皆無なので、何もかもが手際も悪いのだ。
(いいなぁ、私は友達と話すのもバイト先の人と話すコトもできないからなぁ)

 こんなに人生が楽しくないと思えるもの、正直な話だが嫌気をさしている。

「終わったぁー。早く行こー」
「いいよー。今日はチョコ増し増しにしようかな」

 どうやら下校中に寄り道した先でカプチーノを頼むらしい。
 私も一度はカフェラテを頼みたいと思ってカフェに訪れたが、高価すぎて頼むのを躊躇した。
 あれは糖分の多い高級な飲み物である。

「……何見てんの?」
「あっ、いえ」

 やばいっ、こっちの目線に気づいてしまった。
 私は彼女に向けた目線を逸らし、そそくさと自宅まで帰っていく。

〇1
『下校後』
 放課後、私はバイト先であるファミレスで接客対応をしていた。
 ガヤガヤ騒いでいる店内で、注文やレジ打ちをこなす仕事に追われている。
 初日に働く時は楽ではない仕事量に驚いてしまったのを覚えている。

「注文お願いしますー」
「はいっ、少々お待ちください」

 元気よく声を張り、「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」と言い、トラブルや接客にも対応する。そしてファミレスなどの飲食店で働く正社員、そんな人材を雇用するには優秀である必要がある。もちろん私もその話を耳にしたことあるし、実際にこの職場で体感している。

「お待たせしました。注文をお伺いします」
「ハンバーグステーキのレアを一つ、あとオムライス一つでお願いします」
「はい、分かりました。ステーキのソースはどうしましょう?」
「和風ソースでお願いします」

 このファミレスにある人気メニュー『ハンバーグステーキ』。
 肉の部位は市販でも買える品物だが、この店では工夫を凝らした高級な肉として販売している。
 だがその見た目は輝かしく、口に含んだだけで肉汁が溢れて一瞬でとろける。
 まさに調理担当である料理人の腕が素晴らしいと思える一品、最高級のメニューである。

「承知いたしました。また注文がありましたらお伺いください」

 私はメニューを顧客から聞き、調理場に移動して注文の指示を出す。

「肉一品とオムライス、お願いします」
「はいよ。肉一品と卵包み」
「了解っ」

 そして私の注文商品の呼びかけに調理場にいる店員は了解と声をあげる。
 ところが何処からか声が聞こえてきた。嫌な顧客のクレームである。

「どうしてくれるんだ?こっちはお金を払うんだぞ?」
「本当にすいません。こちらで対応するのでお待ちください」
「そういうことじゃない。注文した料理の支払いはどうする?って聞いているんだ」
「はい、こちらで無償提供するのでお許しください」
「うるさいっ‼店長を呼べ、今すぐにだっ‼」

 どうやらアルバイトの新人店員がクレーマーの対応をしているらしい。
 これは新人にとっては困った状況であるから助けるべきであろう。
 私はすぐに新人の元に駆け付ける。

「すいません。どうしたんですか?」
「ああっ?アンタ店長か?」
「いえ、そうではないです」
「は?店長じゃないなら誰だよ?」

 うるせぇ、そっちが吹っ掛けたんだから文句を言うな。

「……店長は忙しいので代わりに私が対応します」
「は?お前舐めてんのか?」

 猫背で老けている中年、そして口煩い言葉で舌を回している。
 これはクレーマー、またはハラスメントというやつか。

「申し訳ございません。注文した商品に関してはこちらで取り替えます」
「そういうことじゃない‼私はきちんとした責任の取り方を求めているんだ」
「……はい、申し訳ございません」
「あ?その顔はなんだ?」

 その男は睨みつけて、私の表情に対して疑惑をかける。
 本当に面倒で関わるのも嫌ではあるが、手を出せばクビになる。
 ここは我慢の時が重要である。

「……ではチーフに無料提供するように伝えます」
「知らん。私の頼んだ商品を捨てるのはSDGsに反している。それ以外の方法で対応しろ」
「はぁ……」

理由が理由なので言葉の意味が分からん客である。
この中年が口にした現代の風潮を使った文句。そして環境問題を示すサステナビリティ―の言葉。
それを出してくるとはダサいとしか思えない。

「どうした?黙ってないで話せ‼」
「分かりました。では土下座で許してくれますか?」
「……違う。そうじゃない」

 どうやら別の方法で示せという申し出らしい。
 一体どんな謝罪を要求してくるのか。私は予想もつかない言葉に問いかける。
 すると男は私の腕を掴んできた。驚いた私は解こうとするが、力強いので振り放すことができない。

「な、何ですか?」
「分からんかね?お前自身で謝罪しろと要求しているんだ」

 なるほど、変態的な言葉を話す客である。
 この男は笑みを浮かべてこちらの方をじっと見る。どうやら体で示せという意味であるらしい。

「どうかね?私の話聞いてくれるか?」
「……嫌です」

 もちろんノーである。私は誰かと付き合ってないので、そんな要求を呑んで人生の汚点を作る訳にはいかない。
 私自身で示すのは誰かを好きになった時だけ。汚い大人に自分を受け渡すのは気持ち悪いし、吐き気がして蔑むことになる。
 だから私に手を出すような奴を許すほど優しくするのはあり得ない。

「そんな冗談が通る訳ないです。今すぐ帰ってください」
「抵抗するなら無駄だ。今等許してや——」
「そんなこと言うなら警察に通報しますよ?」
「ッ⁉……クソッ‼」

 どうやら警察をチラつかせた私の脅しに観念したらしい。
 彼は私の言葉に苦虫を潰した顔をして言葉を吐き捨てると、そのまま自宅まで帰っていった。

「大丈夫?」
「いえ、花蓮先輩ありがとうございます」

 新人の後輩はこちらとの目線が合わずに、手を震わせていた。

「今日は帰っていいよ。店長には連絡しておくから」
「ですが、シフトまで時間はあります」
「なら、少し休んでからでいいから無理しないで」
「……先輩がそう言うなら」

 私は彼女に提言するとそのまま着替え室へと向かい休憩を取るようにし向いた。

「じゃあ仕事の方よろしくお願いします」
「うん、私に任せて」

 私は後輩にそう言うと、彼女の業務を全て受け持ってシフト終わりまでに片づけた。

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