マガジンのカバー画像

短編集

3
こちらは管理人が不定期に更新するようです。一編が3,000字くらいの短編物語になっています。
運営しているクリエイター

#雪玉

【雪玉】

「タクシーで帰ればよかった」  始発のバスで郊外に行く乗客は少ない。乗っていたのは木実だけだ。僅かな出費を惜しんだことを、木実はバスの中で後悔した。 「しまった、昨夜は雪だった。もうぜんぜんついてないわ……」  バスを降り、いつものようにアパートに帰る近道に入って木実は思った。  昨夜は日付が変わった頃から吹雪いていて、近道の原っぱには新雪が十センチをはるかに越えて積もっている。雪雲は去って朝日が新雪を照らしていたが、この照り返しは眩しすぎて、朝帰りの木実は目を細めた