【ユニコーンオーバーロード】
2024年3月プレイ開始
総プレイ時間:約55時間
【ストーリー】
★★★★★ 5
物語の舞台である「フェブリス大陸」は、かつて「コルニア王国」・「ドラケンガルド王国」・「エルヘイム」・「バストリアス」・「アルビオン教国」の5つの国家で形成されていた。
だが突如起こった、皇帝・ガレリウス率いる「新生ゼノイラ帝国」のフェブリス大陸全土への侵攻により、コルニア王国は陥落してしまう。
まだ幼い主人公の王子・アレインは女王が身を挺したことでアルビオン教国に落ち延びるが、新生ゼノイラ帝国による大陸統一は果たされてしまう。
それから数年後。成長したアレインは祖国を取り戻すため、数少ない仲間を集めて解放軍を形成。
「一角獣の指輪」を手に解放軍を率いて、帝国の支配下にある隣国を解放する戦いへと身を投じていくことになる。
本作の物語は、弱小の解放軍が強大な帝国へと反旗を翻すという王道中の王道であり――それも既視感を覚えるほどのだ――目新しさはハッキリ言って無いに等しいだろう。
しかし、それが故に馴染みやすく、複雑な展開などで頭を悩ませることなく、終始物語に没入することが出来た。
余計な描写が省かれることでテンポが良くなっている点も素晴らしく、恐らく製作陣が意図してこのような造りにしたことが窺い知れる。
また、『タクティクスオウガ』やSFC時代の『ファイアーエムブレム』等へのリスペクトやオマージュが多々見受けられるため、笑みをこぼしてしまうプレイヤーも多いのではないだろうか。
理解しやすい王道的な物語でありながら決してプレイヤーを飽きさせない物語構成と、後述するやや難解なゲームシステムである本作との相性は抜群であり、ストーリー面だけを切り取ってみても高い完成度に仕上がっている。
【ゲームシステム】
★★★★★ 5
本作を一言で表すとするならば、「誰でもクリアできるシミュレーションRPG」だと僕は思っている。
本作はシミュレーションRPGと銘打たれているが、戦闘はリアルタイムで進行するRTS(リアルタイムストラテジー)の側面も持ち合わせており、その2つの要素が相まって非常に高い戦略性を楽しむことが出来る。
ただ、その反面ややこしさや難しさをプレイヤーは感じ取ってしまいかねない。
しかし、本作のゲームシステムは一見すると難解に見えてしまうが、実はかなり単純でシンプル――なのに奥深いのである。
まずは本作における戦闘パートについてだ。
戦闘は部隊を編成し、編成した部隊を戦場に送り込み、マップ上で敵部隊とエンカウントさせながら撃破していき、ステージごとに定められた勝利条件を達成していく流れになっている。
部隊を出撃させるには逐一ポイントが必要になり、少数精鋭で挑むのか、大部隊を引き連れるかはプレイヤーの自由となっている。
また、作戦遂行中はマップ上でいつでもポーズ画面に入れるため、慌てて指揮する必要がないという親切設計だ。
部隊の編成は基本的な編隊例はあれど、決められた人数制限さえ守れば、隊列・ジョブの縛り無くプレイヤーが自由に編成しても何ら問題はない。
この自由度の高さは他作品で味わうことは難しいのだが、本作は絶妙な難易度設定によってこの課題を見事にクリアしている。
また、キャラクター毎の明確な性能差が無いため、気に入ったキャラクターが不遇な扱いを受けることもない。
だが、ジョブによって得手・不得手は存在するので、闇雲に突撃するだけで勝利することは難しく設計されている。
この必要最低限の駆け引きを楽しみながら、高い戦略性を引き出すことに成功しているゲームバランスには脱帽する他ない。
さて、敵部隊とエンカウントした際の戦闘の流れだが、こちらも至って簡潔である。
戦闘はオートで行われるため、戦闘画面に移った時点でプレイヤーが介入することは出来ない。
キャラクターにはそれぞれ行動力が設定されており、数値の高さによって順番に敵・味方問わずにスキルを発動していき、どちらかの部隊が全滅するか、ポイントが無くなるまで行動し切ると戦闘終了だ。
スキルの発動は自動だが、プレイヤー側で使用条件を細かく指示することも可能であり、強力な組み合わせや有効なタイミングでの使用を促すことで、戦闘をより優位に進められる。
この作戦指示もプレイヤーの自由であり、事細かく設定せずともクリアまで遊び切ることは十分可能だろう。
また、明らかに格下の相手など、結果を見るまでもない戦闘はスキップすることも出来るため、ゲームテンポを損なわない配慮も非常に嬉しかった。
本作では、戦闘とは別にオープンワールド風のマップを探索できるRPGパートも採用されており、一部のマップを除いてプレイヤーは自由に周辺の国々を動き回れるようになっている。
マップ上には様々なサブクエストや収集要素が豊富に用意されており、仲間の加入や本筋にも絡むイベントの発生、強力な装備品の入手など目白押しだ。
ファストトラベルといった機能もしっかり搭載されている点も抜かりない。
総じてゲーム全体から「自由度の高さ」を感じ取れるのが本作の特徴であり、始めに「誰でもクリアできる」と書き表した理由でもある。
そして、ヴァニラウェアお馴染みである料理に対する緻密な書き込みは本作にも遺憾なく発揮されている。
【キャラクター】
★★★★★ 5
具体的なことは書けないが、本作に登場する人物の数は膨大だ。
しかし、メインストーリー及びサブストーリーにおいて描写がしっかりとされているため、没個性なキャラクターはいないと言っていいはずだ。
キャラクター性を重視するあまり、世界観にそぐわない言動をするキャラクターがいないのも個人的には評価が高い。
また、登場するキャラクターは、人間・エルフ・天使・獣人など多彩な種族で構成されており、豪華で細かいモーションが見ていて楽しい。
しかし、キャラクターデザインはやや人を選ぶ可能性がある。
一例として、服から飛び出そうなほどの胸の大きさを持つキャラ(聖職者)や、どう考えてもおかしい太さの太ももをしたキャラがいる。
僕は笑って許せたが、受け入れがたい人がいるのも事実だろう。
【音楽】
★★★★★ 5
本作の音楽を担当しているのは、『十三機兵防衛圏』から引き続きベイシスケイプだ。
巨悪に立ち向かうという勇ましいテーマに違わぬ壮大な楽曲たちには、否が応でも心が奮い立つ。
各国の風土に寄り添ったフィールドテーマたちも素晴らしく、それぞれの戦場で曲調が切り替わるため、よりこの世界観への没入感を高めてくれた。
昼夜で曲調が変わる点も芸が細かい。
全体的にエレキギターなどの近代的な楽器を使用せず、オーケストラメインの楽曲が多いため、シンフォニック系の曲が好みのプレイヤーには確実に刺さると言える。
曲調は詳細に記せないが、僕はアルビオン教国のフィールドBGMが特に気に入っている。
【総評】
98.5点
昨年の振り返りで、僕は2024年に発売される新作に本作の名を挙げており、実のところ期待値は非常に高めに設定していた。
結果がどうなのか、わざわざ書く必要はもはやないだろう。
公式から売れ過ぎて在庫がないと謝罪のアナウンスまであったのだ。
それが全てである。
やはり、と言うべきか――
アトラスと
ヴァニラウェアに
ハズレなし
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?