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【SCARLET NEXUS】

2023年9月プレイ開始
総プレイ時間:65時間

【ストーリー】

★★★★☆ 4

脳科学が極度に発達した世界「ニューヒムカ」にて、人間の脳を求めて襲来してくる異形の怪物・「怪異」に対して、人々は「脳力」という特殊能力を駆使して対抗していた。
物語は、主人公であるユイト、もしくはカサネが怪異討伐軍に配属されるところから始まり、配属時に出会った仲間たちと協力しながら、政府から下される命令を遂行していくこととなる。

電脳世界と現実をミックスしたようなサイバーパンク感の溢れる世界観は、ただ歩いているだけでも楽しいと思えるようなデザインに仕上がっており、そこへ襲来する怪異のデザインとのアンバランスさ加減が絶妙だ。
ブレインパンク・アクションRPGと銘打つだけのことはある。

主人公であるユイトとカサネはそれぞれ違った部隊に配属となるため、選んだ主人公によってストーリーの視点が大きく変わってくるのも特徴的である。

物語は独特な世界観をベースとしてはいるが、テンポ良く王道的な展開で進行するため良質なJRPGとして楽しむことが出来た。
開発に『テイルズ』シリーズのスタッフが関わっているため、それらの作品をプレイしたことがある人ならイメージが湧きやすいだろう。
しかし、わかりやすく共感しやすい物語の反面、やや描写不足であったり、粗が見受けられるのも事実であるため、他のシリーズでも感じた不満点も引き継いでしまっている点が少々残念だ。

とは言え、この独特な世界観は本作でしか味わうことが出来ないと断言できるほど練られており、SF好きにもRPG好きにも間違いなく刺さる作品であることは間違いない。

【ゲームシステム】

★★★★☆ 4

本作でひと際目を惹くのが、「超脳力」を駆使した近未来的な戦闘システムだろう。
主要キャラクターにはそれぞれ特殊能力がひとつ振り分けられており、主人公であるユイトとカサネは、通常攻撃に加えて「念力」を扱って周辺のオブジェクトを武器にして攻撃することが可能だ。
また、本作の世界では「SAS(サス)」と呼ばれる機能によって超脳力の受け渡しが可能であり、RPGの醍醐味である仲間の増加と共に、主人公が使用できる超脳力が増えていき、それに伴って戦闘も奥深くなる仕組みになっている。
超脳力はいずれも専用のゲージを消費して使用するので、ゲージの残りにも気を配らなければならない点には注意が必要だ。
通常攻撃と念力と仲間の超脳力の連携が戦闘の要になっており、それらを如何に組み合わせて立ち回るかをプレイヤーは常に考えなければならない。
しかし、この点はデメリットにもなり兼ねない仕様であり、人によっては忙しすぎて難しいと感じてしまうこともあるだろう。

斬新で奥深い戦闘システムは非常に面白いと感じるが、敵の硬さや防御行動が回避しかない点には不満も残る。
基本的に敵に攻撃がヒットした際のエフェクトは乏しく、雑魚敵であってもノックバックすることが少ないので、攻撃の最中に敵の攻撃でコンボが途切れてしまうことが多々発生してしまうのだ。
また、念力を使っての攻撃には多少のタイムラグが存在し、ここで行動の阻害をされてしまうと非常にストレスを感じてしまうため、無敵時間の細かい調整や、ガードがあるともっと爽快な戦闘を楽しめただろうと思った。

そして、ストーリーは戦闘を交えたアクションパートとストーリーイベントを交互に行うような形で進行するのだが、このイベントシーンの作りは中途半端であり、非常に勿体ないと感じた。
JRPG特有のムービーシーンは本作にも当然の如く存在するのだが、予算の都合なのか、本作は静止画をつなぎ合わせた――所謂「紙芝居」の形式で進行することが多い。
ただの会話のパートであれば溶け込んでいて違和感がないのだが、激しいアクションが行われるシーンでさえ静止画で進行してしまうので、安っぽく見えてしまったり、何だか滑稽に見えてしまうことが少なくなかった。
まぁ、製作費の都合と言われてしまえば、プレイヤーは何も言えなくなってしまうので致し方無いか。

決して細かくない粗がちらほら見受けられるのは確かだが、杜撰な作り込みということは絶対に無く、製作陣の熱意は様々な点から感じられるため、あと一歩で大作になれた作品という印象を個人的に受けた。

【キャラクター】

★★★★★ 5

主人公であるユイトとカサネは、性別が違うことはもちろん、性格も大きく異なっている。
ユイトは明るく前向きで優しい性格の少年で、これぞRPGの主人公といったキャラクターだ。
対してカサネはクールで論理的な性格の少女で、他人との共感が若干欠如したクール・ビューティーのキャラである。
また、選んだ主人公の性格によって共に行動する仲間も変わってくるため、それぞれのチームの特色が違ってくる点も面白い。

同じチームになる仲間たちの立ち位置は、全体を通してかなりバランスが良く、目立っていないキャラクターがいないほどの存在感をそれぞれが持ち合わせている。
そして、仲間とは物語の合間に絆ストーリーという形で親交を深めることが可能で、絆を深めることによって該当キャラの脳力も強化されていくという仕組みである。
主人公の強化と共にキャラクターの掘り下げも行われるため、作業感がほぼ無いのも好感触だった。

やはり、RPGは魅力的な仲間がいてこそだな、と本作を遊んで改めて再認識させられた。

【音楽】

★★★★☆ 4

やはりというか、サイバーパンクを意識した楽曲が多く、ほとんどの曲がEDMやエレクトロニカをベースとした曲調で構成されている。
しかし、全編を通してキラーチューンと呼べる楽曲が無く、あくまで高水準の楽曲たちという印象。

主題歌はロックバンド・THE ORAL CIGARETTESの「Dream In Drive」という曲で、エフェクトのかかったヴォーカルや打ち込み音のようなドラムが特徴的な楽曲になっている。
同バンドの代表曲は「狂乱 Hey Kids!!」や「BLACK MEMORY」辺りだろうか。

【総評】

88点

本作の開発元のバンダイナムコは一部では悪名高いゲームメーカーであるため、テイルズシリーズ以外は基本的に手を出さないようにしていた。

そんな僕の前に現れた本作は、僕にとって初めてのテイルズスタッフの作った新規IPのゲームということで購入することになった。

結果的に非常に満足のいくJRPGとして楽しむことが出来た。
しかし、今後この手のゲームを果たして開発してくれるかどうか怪しいのが気掛かりだ。

昨今、RPGは時間がかかり過ぎるとして敬遠される傾向にあるようだが、僕はやっぱりRPGが好きだと、本作を通してしみじみと思った。




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