だいじょうぶ、ここにいるよ。
コウコウ、わたし、おばあちゃんなのよ?
あなたといっしょに神戸に来たのは5歳の時でしょ?今、28歳。
歳も取るわよね。ちまたでは、おばあちゃんパンダなんて言われちゃってるのよ?
やぁね、レディに、おばあちゃんだなんて。
子供達がいなくなっちゃって、あなたもいなくなっちゃって、
ひとりぼっちになっちゃったけれど、
私の事を見に来てくれるお客さんや子供達、
飼育員さん達が、いつもいてくれてたから、さびしいって思わなかった。
それにね、動物園に来てくれない人達の気配、季節の風やにおい、聞こえてくる他の動物たちの声とか、色んなものを感じてたの。
ああ、わたし、ずっとここで暮らすんだわって思えた。
でもね、
身体がだんだん重くなってきて、何だか変ねーと思ってたの。
そしたら、心臓が悪いって獣医さん達が言うの。
みんなびっくりしてたわ。わたしだってびっくりしたわよ?
それよりもね、わたし、どうなっちゃうのかしらの方がこわかった。
やだわ、こんなにしんどいのに、みんな心配してくれてるのも知ってる。
でもね、お薬を飲むのも、食べるのも、動くのもイヤになっちゃったの。
その時、はじめてさびしいって思った。涙が出たの。
さびしいわ、コウコウ。ねぇ。コウコウってば・・・。
通路でタンタンは、身体を横たえていた。
檻の向こうから、2人の飼育員の声が、耳に入ってくる。
「爽爽、寝てんのかな」
「どうやろ」
様子をうかがってるのね。寝てるわよ。フンっ。
「すいません、寝てるみたいで」
「いいですよ、少し様子を見させて頂いてもいいですか?」
知らない人間の気配がする。でも、どこか懐かしい匂いがする。
あなたはだぁれ?
「どうぞ」
飼育員の一人が返事をした。
タンタンは耳をそばだてて、気配をさぐりながら、うっすらと目を開ける。
『タンタン、ぼくだよ』
優しい声、この声知ってるわ。
よく見えないけれど、誰なのかしら。でも、知ってるわ、この人。
タンタンは、むくりと身体を起こして、少しず歩を進める。
タンタンは檻越しに、鼻を擦り付け匂いを確かめる。
『コウコウ?コウコウなの?』
『そうだよ、ぼくだよ』
ほんと、コウコウだわ。
「はじめまして、爽爽」
大阪から来た大学の獣医師が、そっと触れる。
『ここにいるからね、だいじょうぶだよ』
タンタンの瞳が、明るく輝いた。
「ごろごろパンダ日記~タンタンとひまわりと約束~」
放送中ずっと泣きながら見ていました。
そして、勢いで書いたのがこの話です。
私の想像だらけの話なので、読み流して下さい。
でも、コウコウがいた庭を画像で見る度に、気配を感じるのです。
もう一頭のパンダを。
※爽爽というのは、タンタンの中国名です。飼育員さんは
中国名で彼女を呼んでいます。
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