「本当にかっこいい人」7


モーリスは小腹が空いてきた
「ペペロンチーノでも作ろうかのう
塩とにんにく、オリーブオイルがあれば万全じゃ
何にでも合う」
モーリスはペペロンチーノを作りながら、かっこいい人、について考え出した
「かっこいい人、といえば、友人の梅野じゃのう」
梅野は薄給でありながら、駅前のマンションを買い、息子を大学に進学させた
そのおかげで、息子は上場企業に就職できたのである
「梅野は大したもんじゃ
あの時の梅野の背中はかっこよかったのう、忘れられん」
モーリスは梅野と、すきやに行ったことがあった
牛丼を食べ終え、レジに行くと、梅野が割引クーポン券を店員に差し出していた
その背中を、モーリスは忘れることができない
「たかだか数十円の割引のために、クーポン券を事前に用意していたんじゃのう、梅野をケチじゃ、と思っておったが、違うのう
彼は経済観念が発達しておるのじゃ
単なる守銭奴ではなさそうじゃのう」
モーリスはまた煙草を吸って、梅野に思いを巡らせた
ただあまりにケチケチ生活を続けると、失うものも大きいのではないか、ともモーリスは思った
ペペロンチーノは、すでに食べ終えていた

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