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【詩】レイプされた言葉たちは...

レイプされた言葉たちは その夏
波にさらわれた なすすべなく

わたしは聞いた
希望に満ちた音節が
断ち切られ、
糸屑となって引き摺られる
砂浜の歯ぎしりを

けれども誰も 悲しまなかった
鋼の翼を持った言葉が
あの海の上を 流れ星のように飛び交った
子供はそれを 花火だと喜んだ

秋になって 鋼の言葉に慣れない人々は
(もちろん、わたしもそこにいた)
羽毛のいまだに散らばる 砂浜へ
墓参りをした

みな言葉を忘れていた
金属の味のする唾を 涙ながらに飲み込むと
やがて 朝と夕 沈黙が
靄を作った それはぼくらの嘆きに応えた
海の悲しい言葉だった

そして冬が来た、いやいずれ、来るだろう

僕らの孤独が 氷点下を
巡るとき 

言葉は自ずから
この砂浜に
霜を
降ろす——

場所を空けよ
此の彼方に
その願いの
ために

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