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溺れたあとの世界

ここは全てのプールの底を繋ぎ合わせてできた世界。主にミステリー小説の中で自分の豪邸のプールで殺された資本家達が自分の心残りの穴を塞ごうとしている。

Profile  one : 田淵喜多郎
私はある製薬会社の社長だった。親父から受け継いだ会社を守って30年、誰よりも我が社に貢献してきた。
しかし、殺されてしまった。通っていたクラブのホステスのボーイに。
私には妻と社会人になったばかりの娘、それと45の時に産んだまだ小学校に上がったばかりの息子がいる。
 なのに、殺したのは自分の生活の1部分しかしめていない、ホステスの、しかもボーイだ。
   なぜ殺されたのかをこっちのプールサイドでシャンパン片手に考えてみると、必ず、月末の金曜日にこっそりとアフターをつけていたホステスと、以前、俺を殺した男はできていたのだと思う。
 790円の下界のことを各地域ごとに、見れるサブスクで覗いてみるのとサキちゃん(私の指名ホストテス)の後をあの男はいつもつけている。別れたあとストーキングを始めた実に典型的な例である。
  待てよ、今気がついたがあの男は捕まっていない。あの防犯を盛り込んだ部屋で。私の愛の巣で。私を殺しておいて。
  怒りが湧いたままその事実を知ってから過ごしていた。こっちで新しく、始めた、おじさんのためのサングラス開発事業にも身が入らないまま。
   ある日、私の妻である加奈をサブスクで追っていた。加奈は息子の勉強の手伝いなど月9が終わる時刻までせっせとひとりで身の回りの仕事をこなしていた。
   あの男か。まだ捕まっていない、サキちゃんを追い回しておいて、呑気に散歩などをしている、本当にクソのような奴だ。
   待て、なぜこいつが私の家のの近くにいる?
私は妻を眺めていたはずだ。なのに、地域を切り替えていないのにこの画面に写っている。通っていたクラブはここから40分はかかる。そりゃ高級住宅街だからこの男が住めるはずがない。あれか犯人は現場に戻ってくると言うやつか。
というか、そもそもなぜあいつは私の家を知っていた? 

それから何日か経った頃だ、underニュースに
速報の記事が入った。
大手製薬会社の社長の殺人容疑で風俗店従業員
逮捕。さらに殺人補助の容疑で被害者の妻逮捕。
 最悪だ。もう下界には戻れないから、あの若者に説教することも出来ない。妻の不倫を正すことも出来ない。子供達を見てやることも出来ない。
   私のストレスはどこにぶつければいいのだ。
   冷静になり、いまはビジネスに打ち込んでいる。私には、女もは人脈よりも社会的評価を受けることが最高の至福だと今は思うようにしている。
   このプールに溺れた資本家のおじさんしかいない世界で。

                                                                          [完]

拙い思いつきで書いた文章でしたが最後までお読みいただきありがとうございました。
※ここに出てくる人物、発生した出来事は事実とは一切関係ありません。


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