児虐法3条、5条、6条

(児童に対する虐待の禁止)
第3条 何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。

→『虐待対応手引き』より、児虐法2条各号のみならず、幅広く子どもの福祉を害する行為(児童売春等)や不作為に関しても含まれる。

(児童虐待の早期発見等)
第5条 学校、児童福祉施設、病院、都道府県警察、婦人相談所、教育委員会、配偶者暴力相談支援センターその他児童の福祉に業務上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師、弁護士、警察官、婦人相談員その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない。(努力義務)

2 前項に規定する者は、児童虐待の予防その他の児童虐待の防止並びに児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援に関する国及び地方公共団体の施策に協力するよう努めなければならない。

3 第1項に規定する者は、正当な理由がなく、その職務に関して知り得た児童虐待を受けたと思われる児童に関する秘密を漏らしてはならない。

4 前項の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第2項の規定による国及び地方公共団体の施策に協力するように努める義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。

5 学校及び児童福祉施設は、児童及び保護者に対して、児童虐待の防止のための教育又は啓発に努めなければならない。

※本条1項、2項は児童虐待を発見しやすい立場にある者や団体に対して、一般国民に比してより積極的な責務を負わせた規定。上記で挙げられた職業や団体は例示である。

(児童虐待に係る通告)
児童虐待防止法6条1項
児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

同条2項
前項の規定による通告は児童福祉法25条第1項の規定による通告とみなして、同法の規定を適用する。

同条3項
刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第1項の規定による通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。

(メモ)
※本条の通告義務を負うのは、全ての国民である。また、義務を負うのは個人だけではなく、学校、病院等の関係施設も含まれており、この場合の通告について、組織的な対応が求められる。
※本条違反に関して、罰則は課されない。
※判例において、「発見者が主観的に児童虐待であると認識したときは同法上の通告義務を負い、虐待の事実がないことを認識しながらあえて通告をした場合及びそれに準ずる場合を除き、通告をしたことについて法的責任を問われることはないと言うべきである」としたものがある。
(参考法令)
児童福祉法25条1項
要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通行しなければならない。ただし、罪を犯した満14歳未満の児童についてはこの限りでない。この場合においては、これを家庭裁判所に通告しなければならない。
2項
刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前項の規定による通告をすることを妨げるものと解釈してはならない。
(秘密漏示罪)
刑法134条1項
医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
→児童福祉法25条2項、児童虐待防止法6条3項の規定により、これらの通告には正当な理由があるので、134条1項の規定は適用除外。
(メモ)
※児福法25条1項但し書きにおいては、要保護児童であっても、罪を犯した14歳以上(犯罪少年)の児童については、家庭裁判所に通告しなければならないとする規定。一方で、虞犯少年(20歳未満で、将来犯罪を犯す可能性がある者)や触法少年(14歳未満で犯罪を犯した児童)は児童福祉機関先議の原則により、家庭裁判所は、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。
※児福法25条1項の「要保護児童」とは、保護者に監護させることが不適当であると認められる児童を指す。

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