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1999年7月1日(木)

【南地区レストラン:桜庭 敦子・平山 裕美・布川 和人・沖本 蓮香・高松 準也・島 可南子】
「まあここがタイミングではあるかもしれないんだよね」
「次の迷宮があるかどうかもわからないしね」
 ため息を吐きながら発した平山 裕美の言葉を聞いて、沖本 蓮香も感想を述べた。ここはお昼過ぎの『南地区レストラン』。冒険者や職員達がお昼のひと時をのんびりと過ごしている。本日も新迷宮の地下6階を探索した湘南爆走隊部隊であるが、まだ今回で4回目だというのに、すでに鏡の間に飽きてきてしまっているのである。以前からこうなることは予測していたので、探索の進度を通常よりも遅らせたりはしていたが、実際に新迷宮をクリアした今、冒険者の矜持というか、そのようなものを感じなくなってきているのである。
「てへトリオさん達はすごいわね」
「あの人たちは常人とは違いますからね」
 アイスコーヒを一口含んだ後で桜庭 敦子が言葉を漏らして、それに布川 和人が感想を口にする。てへトリオ部隊は3年前に新迷宮をクリアしており、その後はずっと鏡の間での戦闘を繰り返している。それなのに戦士鍛錬場での様子を見ていると前田 法重と原田 公司、中尾 智史は誰よりも厳しい鍛錬を行なっており、まだまだ強くなろうと日々努力しているのである。もし、今後新しい迷宮が発見されなければ今以上の実力は正直不要であり、現状維持程度の鍛錬さえ行なっていれば十分なのである。
「そこまでのモチベーションは保てないかな」
「別のことを考えておいた方が良さそうですね」
 このまま鏡の間の探索のみを続けた場合の気持ちについて島 可南子が口にし、それに高松 準也も自分の意見を述べる。結果全員の意見をまとめると、やはりこのまま新迷宮6階での亜獣狩りを続けるだけというのは、気持ち的な満足感が得ることができない。そこで、もし新しい迷宮が発見されないのであれば、どこかのタイミングで冒険者を引退することになるだろうという結論となった。そのためにも今は冒険者を続けつつ、引退した後に何をするかは各自考えておこうということを全員で認識しあったのである。

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