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1999年7月22日(木)

【罠解除士鍛錬場:森下 翼・前島 瑠衣・大塚 仁】
「いてててててて」
「マジで後少しやったな」
 罠解除装置に吹っ飛ばされた森下 翼が、腰をさすりながら歩いてくるのを見て、大塚 仁は笑顔で声をかけた。ここは午前中の罠解除士鍛錬場。本日もたくさんの罠解除士が鍛錬を行っている。13期生である森下と前島 瑠衣は朝から一緒に鍛錬を行っており、先程から罠解除装置にチャレンジしているところである。スケジュール的にはそろそろレベル12をクリアしても良い頃であるが、本日探索を行っている宮本 紳を含めて13期生は誰もまだクリアができてない状況だ。今も森下がレベル12にチャレンジしたが、後少しのところで解除に失敗し、吹っ飛ばされてしまったのである。
「最後のところで手が止まったな」
「ちょっと頭の中が混乱してしまったす」
 最後の部分の手の動きを真似しながら大塚が言葉を発して、森下がそれに返事を返す。罠解除は基本的に感覚で行う物であり、頭で考えてしまうと解除が遠のいてしまう。ただ、思うように罠が解除に向かわなければどうしても何とかしようと考えてしまうことになり、それが失敗につながるのだ。
「私もダメでしたー」
 同じくレベル12の罠解除に失敗した前島がガッカリしながら近づいてくる。ただ、大塚が見た感じでは前島ももうすぐクリア出来そうな感じはしている。
「2人とも最後のところで手が止まってるんだよね。レベル12の最後は確かにわかりにくいところがあるけど、手を止めたら確実に解除できないから、とりあえず闇雲でもいいから手を動かしてみよう」
 こうアドバイスをする大塚の声を聞いて、森下は大きく頷き、再度罠解除装置に向かう。そして5分後に森下はレベル12の罠解除に成功したのである。

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