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1999年4月19日(月)

【熊大第2迷宮:湘南爆走隊部隊】
「さて、8の部屋ですね」
 目の前の扉の罠を解除した後で沖本 蓮香がこのように言葉を発した。ここは熊大第2迷宮。湘南爆走隊部隊は地下5階を訪れて、8と表示されている扉の前にやってきている。そして沖本が扉にかけられた罠を解除したので、後は突撃するだけの状況となっているのだ。
「準備は良い?」
 隊員全員に向けて桜庭 敦子が声をかけて、それに全員が頷きで返事を返す。そして布川 和人に目配せをし、それに反応して布川が扉を蹴破って中に侵入した。扉の奥は通常の部屋の作りとなっており、その部屋の奥部分に腕を組んで立っている1体の亜獣が存在している。その亜獣は人間タイプであり、見た目は肌が黒く、少し変わった防具を身につけている。そして表情は今までに見てきた亜獣と違い、非常に理知的であり、扉を蹴破って冒険者達が侵入してきたのに、全く驚く気配もなく平然としている。その様子を見て湘爆のメンバーも少し動揺し、一旦動きを止めてしまう。
「やあ、いらっしゃい。一つなぞなぞを解いてもらおうかな。解くことが出来たら、戦わずに消滅してあげましょう
 亜獣がこのように提案してきたので、湘爆のメンバーは互いに顔を見合わせ、亜獣の提案を受けることにする。
「わかった。問題を出してくれ」
 この桜庭の声を聞いて、亜獣は嬉しそうな表情を浮かべ、なぞなぞを出題する。
「黒い犬と白い犬。おとなしい犬はどっちだ」
 問題を聞いて、全員が思考に入る。なぞなぞなので何かを引っ掛けたような答えになっているはずだ。いろいろ考えるもなかなか正解が浮かばない。
「わかった!」
 手をポンと叩きながら平山 裕美が声を上げる。そして仲間達に自分の答えを発表しても良いかどうか目配せし、他のメンバーは答えが浮かびそうになかったので、これを了承する。
「白い犬」
 亜獣を指差しながら平山は大声で答えを発表する。それを聞いて少し笑みを浮かべた亜獣が質問する。
「その理由は」
 この声を聞いて平山は自慢げな表情を浮かべて説明を始める。
「真っ白い犬は尻尾も白いからおもしろい!!」
 この叫び声を聞いて平山以外の全員が頭の上にはてなマークが浮かぶ。問題はおとなしい犬はどちらかということだったはずだが。
「残念。不正解だ」
 こう言葉を発した後亜獣は体を変形させ、サメのような形状になり、空中を泳ぐように攻撃してくる。一瞬反応が遅れた平山は体当たりで吹っ飛ばされて壁に激突する。この後、答えを間違えた平山は一旦放っておいて桜庭と布川で肉弾戦、高松 準也と島 可南子の攻撃魔法で何とかこの亜獣を倒すことが出来た。そして沖本の物質回収をしている間に、平山のダメージを布川が回復させ、本日はこれにて探索を終了することにしたのである。

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