見出し画像

1999年3月25日(木)

【熊大第2迷宮:絶対運命黙示録部隊】
「さあ、ボスだ」
「聞いたことある」
 気合を入れて発した井上 貴志の言葉を聞いて、中村 瞬が思わず突っ込みを入れた。ここは熊大第2迷宮。絶対運命黙示録部隊は本日も地下3階を訪れ、まず奥にボスがいると思われる豪華な扉の罠解除に挑戦した。今まで何度もチャレンジして来たがことごとくその罠の難しさに打ちのめされていた飯島 志保は、今日こそはの気持ちを込めて罠解除を開始する。そして沈黙の中15分が過ぎ、大きく息を吐いたかと思うと、後ろを振り返り満面の笑みを浮かべながら部隊のメンバーにサムズアップを行った。これを見て、井上が先程のような言葉を発したのである。いつものように罠が解除された扉を栗原 慎が思い切り蹴破ると、扉の奥は通路のようになっており、すぐ先に部屋の空間があるようだ。周りを警戒しながら中に入ると、地下1階、2階にもあったような壁画が壁に存在している。
「やっぱりボス部屋でしたね」
「さてさて、何が出るかな♪」
 視界に入って来たものを冷静に分析した島津 亮二の言葉に、松 美由紀は少し楽観的に鼻歌を歌う。この空間に入るのは自分たちが初めてなので、実際どのようなボスが出てくるかは全く分からず、全滅させられるような強力なボスが出てくる可能性もあるのである。とはいえ、第1迷宮に類似している現在までの状況を考えると、そのようなことが怒るとは考えにくくはある。
「まあ戦ってみましょうや。俺からでいいかな」
 冷静沈着に見えて、実はボス戦をやってみたくて仕方がない井上の言葉を聞いて、栗原と松は少しにやけながら了承する。それを見て井上はいつもと同じような場所に右手を差し込む。すると煙が巻き上がり、亜獣が出現した。其の亜獣は子供のように体が小さいが、身体中に何やら武器のようなものを装備している。そして無表情に井上を見つめ、言葉を発した。
「キサマ、なぜ邪魔をする」
 言葉の意図は良く分からないが、何やら少しイラついているようすの亜獣は井上に対して戦意を向け、それを受けて井上は大きく息を吐き、剣を構えた。この亜獣は体に装備された武器から飛び道具を放ってくる。これは魔術師の攻撃呪文である爆発に匹敵する程度の威力を持っている。ただ、爆発と違うところは回避が可能であり、避けれさえすればそれほど恐ろしい攻撃ではない。飛び道具を交わしながら亜獣に近づき、井上は近接戦闘を仕掛ける。すると亜獣もどこからか出現した武器を手に持ち、それを迎え撃った。しばらく一進一退の攻防を続けていたが、最終的には井上が渾身の一撃を喰らわせることに成功する。
「一つ聞きたい。オレは何なのだ」
 途切れ途切れの声で亜獣はこのように言葉を発し、そのまま消滅していった。
「お疲れしたー。物質回収します!」
 元気よく飯島が物質回収に向かい、井上は中村の場所に移動し、回復を依頼する。
「うわー、結構喰らっちゃってますねー」
「いや、あいつ強えって」
 笑顔を浮かべながら回復を行う中村の言葉に、井上も少し笑いながら返事を返した。この後は、栗原、松も1戦ずつボス戦を行い、本日は探索を終えることにしたのである。ちなみにこのボスの名前であるが、全員が第一印象で感じたイメージであるガキという名称に決まった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?