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1996年3月27日(水)《BN》

【熊大第1迷宮:やっぱり僕にはね部隊】
「ここまで来た事は褒めてやろう」
「きゃーレア亜獣出現!」
 旧迷宮地下10階を探索していたやっぱり僕にはね部隊は、通常よりかなり大きい剣を地面に突き、仁王立ち状態の女剣士の亜獣と遭遇した。この亜獣は、地下9階と10階に出現する女四姉妹戦士のさらに上位ランクに位置づけられる剣士で、鋭い眼光で、部隊を睨んでいる。この手のレア亜獣に対しては戦士が1対1で戦うのが何となくのお約束となっているので、後衛は特に魔法を唱えることもなく、戦士3人の様子を見守っている。
「さて、誰が行きますか」
「私が行きます!」
 そう言って江良 涼子が一歩前に出る。亜獣は江良が近づいてくるのをその場で待ち構え、ある程度の間合いになると、構えに入った。
「いきます!」
 そう叫んで、亜獣に攻撃を加える江良であるが、すべての攻撃を剣でふせがれ、ダメージを与えるのは難しいようである。
「貴様を倒す!」
 そうこうしているうちに、防御に徹していた亜獣が、山下の隙を見逃さず、攻撃に転じる。
「破龍崩山!」
 亜獣の剣が江良にクリーンヒットし、江良は後方まで吹き飛ばされた。
「ぐえー、やっぱり強いです!高田くん・・・」
 予想以上に大きなダメージを受けて、大の字に倒れた江良は、高田 信二を呼んで回復魔法を頼んだ。
「江良ちゃんは・・・大丈夫そうだな。では気合を入れますか」
 坂上 直弥が軽く肩を回しながら、亜獣に近づき、剣を構える。亜獣は坂上の強さを感じ取った様子で、先ほどよりも一段と集中した表情になり、剣をかまえ、間合いを計った。
「勝負!」
 先に攻撃に転じたのは坂上で、亜獣に対し連続攻撃を仕掛ける。亜獣はそのすべてを受け流すことができず、攻撃をくらっているが、防御力が高いようで、なかなか倒すまでには至らない。
「こちらから行く!」
 坂上の連続攻撃の一瞬の隙間を狙い、亜獣が反撃に出る。
「破龍崩山!」
 必殺の一撃であったが、坂上はこの攻撃を何とか受け止め、その隙に反撃を加えた。その後、基本的には坂上のペースで戦いが続いているが、亜獣に対して決定的なダメージを与えることができない。
「く、このままではラチがあかない。一旦退却させてもらう」
 亜獣はそう叫んで、後ろに大きくジャンプし、そのまま迷宮の奥へと消えていった。それを眺めながら大きく息を吐いた坂上は部隊の方向に無理向いて言葉を発する。
「まあ今回は引き分けということで。じゃあ信二、俺も回復お願い」
 こういいながら、高田の近くに近づいた坂上は、肩で息をしながら、回復魔法を頼んだのである。

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