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1999年8月24日(火)

【熊大第3迷宮:絶対運命黙示録部隊】
「何か違和感がある」
 こう言葉を発しながら飯島 志保が急に立ち止まった。ここは熊大第3迷宮。絶対運命黙示録部隊は本日も地下4階を訪れている。いつものように階段を降りた場所から三叉路へと向かっていたが、その途中で何か異変を察知したみたいなのである。
「どうした。亜獣か?」
 後ろを振り返って井上 貴志が声をかける。すると飯島は質問に対しては首を横に振って否定し、何か右側の壁を調べているようである。
「何かあるのかな」
「全くわからんわ」
 後方から眺めながら島津 亮二が言葉を発して、中村 瞬も感想を口する。飯島以外の全員がその場所に対して何の違和感も感じない。
「この奥に何かありそうです」
 壁を調べながら飯島が報告する。罠解除士として、そこに何かがあることを確信しているようで、一心不乱に壁を調べ続けている。こうなってくると他のメンバーは飯島が納得いくまで待っておく以外の選択肢はない。
「ここかな」
 カチという音と共に壁に扉の枠のようなものが出現する。どうやらこの扉から奥に進むことが出来るらしい。
「蹴破れるかな」
 こう口にした後、栗原 慎がその場所を思い切り蹴り上げると、そこは扉のように開き、その奥は通路になっているようである。
「奥に亜獣の気配はないです」
「じゃあ進んでみるか」
 奥の状況を飯島が報告し、井上の指示で全員が奥へと進んでいく。するとそこにはエレベータが存在していた。
「これがエレベータか」
「上に行くんだよね?」
 思わず栗原が言葉を漏らし、それに松 美由紀も感想を続ける。まずは飯島がエレベータに乗り込み、安全を確認する。その後、全員が乗り込んで、中にあるレバーを飯島が操作した。するとエレベータは上に上がり、停止する。それを3回繰り返し、おそらく1階であろう場所に到着した。エレベータを降りた先はすぐに扉が存在している。そしてその扉を開けると、そこは良く知っている地下1階の神殿内であった。
「ここに扉があったんだ」
「いや、なかったはずです」
 周りを見渡しながら発した井上の言葉に、飯島が返事を返す。その場所は何度も通っており、この場所も何度か調べていたので、確かにここには扉はなかったはずである。だが、今は存在しており、その理由は良くわからない。ただこれで次回の探索から地下4階に降りるためには、このエレベータを利用すれば良くなり、1階ずつ階段を降りる必要は無くなったのである。

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