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1996年10月1日(火)《BN》

【冒険者組織運動場:高宮 太輔・金尾 秀文】
「お待たせー」
「うむり。では行くとするかの」
 冒険者組織本館入り口で高宮 太輔が声をかけ、待っていた金尾 秀文が返事を返しつつ移動を開始した。本日は15期冒険者2次試験の初日であり、先程まで全体と、各職業に分かれたオリエンテーションが行われていた。高宮は戦士、金尾は僧侶での説明を受けた後で、今から行われる体力測定のために運動場に移動している最中なのである。
「可愛い女の子はいたかい?」
「いきなりそこ?まあいたっちゃあいたかな」
 歩きながら高宮が投げかけてきた質問に金尾は少し呆れながら返事を返す。現在彼女がいない2人は冒険者という新たな出会いに軽く期待をしていたところもあり、本日2次試験メンバーと初めて合流することから、お互い女の子情報を共有しようという話はしていたのである。だが、まだそこまで詳しい情報を収集出来ていない冒険者というものに対して、本日のオリエンテーションで初めて分かったことがいくつかある。そこでまずはそちらの話からとは考えていた金尾だったが、優先順位が自分とはどうも違ったようである。ちなみに2次試験受験者は戦士が30名で僧侶が10名であり、そのうち、戦士は13名が女性で、僧侶は6名が女性である。
「あ、あの髪短い子可愛くない?」
「ん?あー、確かに可愛いかも。でも僧侶にはいなかった気がする」
 少し先を歩いている3人組の1名について感想を述べた高宮の言葉に、金尾も同意の言を発する。3人全員がある程度可愛い感じであるが、真ん中を歩いているショートカットの女の子は特に可愛く、楽しそうに浮かべている笑顔も素敵である。
「良し、頑張って合格してあの子と同じ部隊になるぞ」
「まあ、やる気がでるならいいんじゃないかな」
 あまりにも単純な高宮に多少呆れている金尾であるが、2次試験合格に向けて目標が出来るのは悪い事ではないので、軽く応援することにした。ちなみにこの時の女性3人は罠解除士の受験者であり、2人が可愛いと絶賛したのは新藤 麻乃という名前であることが後に判明するのであった。

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