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1996年5月15日(水)《BN》

【戦士鍛錬場:中尾 智史・原田 公司・前田 法重】
「あそこにいるいかついおっさん達には気をつけて下さいね」
「誰がいかついおっさんやねん」
 新入隊生たちに戦士鍛錬場に関するあれこれを説明していた中尾 智史は、特に新入隊生達と絡むことなく、いつものように自分たちがいつも利用するエリアで軽く体を動かしている前田 法重と原田 公司を指差して発言し、それが聞こえたらしい原田が大声で突っ込みを返した。ここは午前中の戦士鍛錬場。本日から14期の合格者達は、この戦士鍛錬場で既存の冒険者達と一緒になって鍛錬を行うようになる。初めて入室した時はさすがに緊張していた14期のメンバー達であったが、既存のメンバーが優しく声をかけたり、全体での自己紹介も行われたりしたので、すでにしっくりと馴染んでいる様子である。自己紹介は全員で行ったので、もちろん前田と原田も参加している。しかし、特に面白い話をすることなく、事務的な挨拶だけを行い、とっとと鍛錬を開始したのである。正直黒髪てへトリオ部隊は第2迷宮探索の最終局面を迎えており、新入隊生の相手をする心の余裕がないのである。その意味では中尾も同じなのであるが、先輩2人がその状況なので自分だけでもと思い、一念発起して新入隊員の相手を頑張っているのである。
「通常は期ごとに分かれて鍛錬を行います。そして鍛錬場所はある程度固定になります。現在はあの辺りが空いているので、そこを利用してください」
 今後の鍛錬場所について中尾が説明する。基本的に戦士のメンバー達は鍛錬場の同じ場所で鍛錬を行うことを好む。その方が鍛錬に集中できるし、毎朝どこで鍛錬するかを考える必要もなくなる。現在の配置も大体期ごとに分かれて鍛錬場を利用しており、先程中尾が言ったスペースはここしばらく誰も使っていないスペースなのである。
「では僕からの説明は以上なので、あとは各自鍛錬を行ってください」
 この言葉を聞いて、14期の戦士達は言われた場所に移動して鍛錬を始めた。そこまで確認した中尾は軽く息を吐いて自分の鍛錬場所に戻る。
「いかついおっさんで悪かったね」
 そこにはこのように言葉を発しながらにやけ顔で自分を見つめる前田と原田が待ち構えており、この後鍛錬終了まで順番にしごかれることになったのである。

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