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1999年10月4日(月)

【冒険者組織会議室:高嶋 美樹・櫻木 美雨・松島 明日香・滝川 亜佳里・坂上 直弥】
「それではこの後は各職業に分かれた説明会になります。罠解除士受験の方はあちらの滝川さんのところへ、僧侶受験の方はあちらの櫻木さんのところへ、魔術師受験の方はあちらの松島さんのところへ移動してください。そして戦士受験の皆さんはそのまま今の場所で待機しててください。それでは移動お願いします」
 全体オリエンテーションが終了した後で、高嶋 美樹は会議室全体に聞こえるような大きな声で受験者達に対して指示を行った。ここは冒険者組織会議室。本日は21期募集2次試験の初日であり、朝からここに集合した受験者達全員に対して全体オリテを行っていた。そしてそれ自体は何事もなく予定通りに終了したので、この後は各職種に分かれての説明会となるのである。本日の全体オリテの進行は基本的には戦士教官の高嶋が行っており、罠解除士教官の滝川 亜佳里と僧侶教官の櫻木 美雨、魔術師長官の松島 明日香、そして戦士長官サブの坂上 直弥は受付や誘導などの進行補助を担当していた。
「お疲れ様でした。高嶋さん」
「本当疲れた。この後の戦士説明会は任せたわよ」
 ねぎらいの声をかけてきた坂上に対して、疲れた表情を浮かべて高嶋が返事を返す。このように大勢の目の前で話をする機会もそうあるわけではないので、緊張から来る疲労感を非常に感じているのだ。
「え、戦士の説明って俺がするんでしたっけ?聞いてないですよ」
「あら直弥くん。生意気な口が聞けるようになったみたいね。後で模擬戦お願いできるかしら」
 とぼけた表情を浮かべて言葉を発した坂上に向かって、引きつった笑顔を浮かべて高嶋が丁寧な言葉で返事を返す。高嶋は元7期生であり、坂上は元8期生である。高嶋が入隊期が1期早く、年齢も1つ上である。現役時代は一つ上の先輩として坂上を可愛がってあげてた記憶があり、その頃の坂上はすごく素直で可愛げがあった記憶がある。だが、戦士を引退して組織の職員として働いた後、今回戦士教官補佐として帰ってきた坂上はあの時の可愛げがなくなっているようだ。
「冗談ですよ。高嶋さん。後はおいらがやりますので、ゆっくりしててください」
 こう言った後で坂上は会議室に残った戦士受験者30名を連れて戦士鍛錬場②へと移動していく。それを見届けた高嶋は、自販機でお茶を購入し、少し休憩した後で、戦士鍛錬場②へ向かったのであった。

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