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1999年5月18日(火)

【AXIS:大塚 仁・本田 仁・富田 剛】
「特段びっくりするような子はいなかったっす」
「今回も左門ではないってことか」
 報告をするように言葉を発した大塚 仁に対して、お冷を持ってきた富田 剛が感想を口にした。ここはゲーム&喫茶『AXIS』。お昼過ぎの時間であり、ある程度の客で店内は賑わっている。本日冒険者組織では20期生のオリエンテーションと能力解放の儀式が行われた。能力解放の儀式は沖本 蓮香がメインで大塚もサブで手伝いを行っている。この儀式は、罠解除士と僧侶、魔術師の能力を強制的に解除するものであり、これを行うことで探索を行うまでに必要な鍛錬時間が2ヶ月程度短くなる。具体的に言えば、2次試験の課題は指先に光を灯すであったが、この次の課題は手のひらの上に光球を浮かべるというものだ。これを鍛錬のみで自力で行うと、2ヶ月程度の期間が必要となるのであるが、これが能力解放を行うことにより、即時にできるようになるのである。また、この能力解放時に手のひらに浮かぶ光球については通常ソフトボールぐらいの大きさの白い球が出現するのであるが、対象者の才能や能力により、初めから通常より大きさが大きかったり、色がついていたりするのである。これで、初期段階での能力の高さを測ることができるのである。ただ、大塚の言によると、20期の光球出現で目を引く対象者はいなかったようである。ちなみに富田が口にした左門とは豊作のことである。
「あとまあこれはどうでも良いけど、全体的に本田好みは居なかったと思う」
「大塚が俺の好みをどれくらいわかっているかは疑問だけどね」
 おそらく気になっているだろうと考えた大塚が20期女性メンバーのルックスについて口を開き、それに本田 仁がため息混じりに返事を返す。自分の好みを完全に大塚が把握しているわけではなく、その状況で好みがいないというのは信用ならないのである。とはいえ、ある程度の好みを理解しているのは確かではあるので、あまり大きな期待はしないようにする本田であった。

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