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1996年5月9日(木)《BN》

【戦士試験場②:前野 諭子・雨宮 英利香・小林 みゆき】
「完膚なまでに叩き潰してあげるわ!」
「吐いたつば飲まんとけよ」
 自信満々の表情を浮かべて発した前野 諭子の言葉を聞いて、どこで覚えたのかわからないセリフを雨宮 英利香がニヤけながら答えた。ここは戦士鍛錬場②。本日は2次試験の6日目である。いよいよ試験も明日までとなり、受験者全員が自分のポイントやランキングを気にしながら、1戦1戦の模擬戦に全力で取り組んでいる。現在上位にランキングされている受験者は、より上位を目指しつつ、ランクが下がらないように気をつけながら模擬戦を続けている。また、ランキングが下位のものはもちろんランクを上げるのももちろんだが、もしランクが上がらなかった場合でも何かしら教官にアピール出来ることがあれば合否に影響するかもしれないということで、動きが派手だったり大袈裟な反応だったりと、少し見ていて辛いような戦い方をしている。そんな中、現在暫定1位の前野と暫定3位の雨宮が模擬戦を行うことになったのである。2人は友人でもあるので、模擬戦以外の鍛錬でも剣を交えることが多く、ポイント的には前野が上であるが、直接対決ではほぼ互角の実力を有している。
「いざ、尋常に、勝負!」
 全体的な模擬戦の開始合図だったので、特にこの2人のために発した言葉ではないが、小林 みゆきのこの言葉に気合を入れ、2人は模擬戦を開始する。お互い相手の動きはある程度熟知しており、手探りをしながら試合が進む。基本的には手数が多い前野の攻撃を冷静に対処しつつ、雨宮がカウンターの1撃を狙うような流れだ。結果2人はお互いに有効打を与えることができず、評価的にはドローとなり、前野は1位のままだったが、雨宮は1つランクを落として4位になったのである。

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