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1999年5月14日(金)

【僧侶鍛錬場②:櫻木 美雨】
「さて、残る時間はあと80分です。皆さん悔いが残らないように頑張ってください」
 鍛錬場に響く櫻木 美雨の声を聞いて、まだ課題をクリア出来ていない受験者たちは気合を入れ直し、鍛錬を再開した。ここは僧侶鍛錬場②。本日は2次試験の最終日である。現在10時40分。鍛錬終了の12時までに残された時間はあと80分である。現在僧侶で課題をクリアしているのは山木 可奈絵、梅本 孝史、田上 沙由美、友永 静花の4人であり、残る80分で課題クリアできれば暫定合格ラインの5人目に入ることができる。そこで全員が必死の形相で指先に光を灯そうと頑張っているが、なかなか成功せず、鍛錬場自体がピリピリした雰囲気となっている。そんな中、すでにクリアしている4人は少し離れた場所で、誰が5人目の合格者となるのかを楽しみにしながら別メニューをおこなっている。だが、なかなか合格者は現れず時間ばかりが過ぎていくのである。
「残り30分です。ラストスパートです!」
 受験者たちの間を移動しながら、櫻木が最後の檄を飛ばす。残り30分で長かった2次試験も終わりを告げるのである。ただ、ラストスパートと言われても頑張ってどうにかなる物でもないので、受験者たちはただ単にあせりが大きくなるだけのようだ。このままクリア者が出ずに試験が終了するかと思われたが、終了5分前に小笹 沙穂の指に光が灯る。その瞬間合格の可能性がなくなったとわかった他の5人は諦めた表情を浮かべて小笹を祝福し、小笹はそれに頭を下げて礼を返したのである。
「はい、それでは12時になりましたので、2次試験終了となります。お疲れ様でした」
 試験終了を告げる櫻木の声に課題をクリア出来なかったメンバーは大きなため息をついて鍛錬場を後にする。もし小笹がクリアしていなければ合格の可能性も残されていたが、これでほぼ合格の可能性は0となったことを認識しているのである。これで20期2次試験は終了となり、来週月曜日の合格発表を待つ状態となる。今回2次試験中に課題をクリアしたのは僧侶が5名、罠解除士が5名、魔術師だけ4名だったので、魔術師だけは残りの1名の合格者が全くわからない状況で合格発表を迎えることになったのである。

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