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1999年9月21日(火)

【熊大第3迷宮:絶対運命黙示録部隊】
「ふう、解除できました!」
「おお、志保ちゃんおめー」
 大きく息を吐いて振り返り、満面の笑顔で言葉を発した飯島 志保に向かって、松 美由紀が大きな声で祝福した。ここは熊大第3迷宮。絶対運命黙示録部隊は本日も地下4階を訪れている。まずはいつものようにまだ開けることができていない2つの扉の罠解除を飯島が試してみる。すると先週から解除が出来そうだった片方の扉については見事に解除に成功したのである。
「とりあえず奥に亜獣はいないので、開けても大丈夫ですよ」
 部隊の場所に戻ってきた飯島がこう報告したので、井上 貴志の指示で栗原 慎が思い切り扉を蹴破る。そして部屋の中に入るといつもの壁の壁画が存在していた。
「良し、ボス戦やな」
「こんどはどんなやつが出るんだろうね」
 壁画を見つめながら井上が言葉を発し、それを聞いて松が感想を口にした。この部屋に侵入したのはこの部隊が初めてであり、どのようなボスが出てくるかという情報は何もないのである。
「回復は任せろー」
「応援は任せろー」
 後方から僧侶の中村 瞬と魔術師の島津 亮二の声援が飛ぶ。ボス戦の間は暇なので、2人は基本的には声援を送るぐらいのことしかできない。
「じゃあ行こうか」
 あまり考えていても仕方がないので、栗原がボスを出現させるために壁画に向かう。そして口の部分に手を差し込むといつものように煙が巻き起こり、亜獣が出現した。
「本気を出して僕をくい止めたまえ。冒険者達よ」
 何か非常に優雅な男性が現れ、華麗な舞を踊り続けている。一瞬その動きに心が奪われそうになったが、気持ちを入れ直して剣を構える。すると亜獣も笑顔を浮かべて、戦闘の構えをとった。井上と栗原、松の3人はボスに対して全力で攻撃を仕掛けるが、このボスは終始余裕な感じで攻撃を避けている。ただ、途中途中に変な動きが入るので、そこには少しスキが生まれるようである。
「スキをついて攻撃するぞ。喰らったらいったん回復!」
「了解」
 大声で指示を出す井上の言葉に、栗原と松は返事を返した。この後も変な動きをするボスに翻弄されながらも、ボスがあまり本気の攻撃をしてこないのもあり、次第に優勢になっていく。とはいえ、途中で何度か交代で回復はしているので、ある程度のダメージは喰らっているのである。この後しばらくして、亜獣の動きが急に鈍くなり、亜獣はこちらの攻撃を喰らいまくるようになる。そして笑顔を浮かべて言葉を発した。
「諸君さようなら、天からのお迎えが来たようだ」
 こう言葉を発したボスは、天から降りてきた天使達に連れられて上空高く舞あがり、そして消滅していった。あまりにも派手な演出に戦士3人は唖然としていたが、戦闘に勝利したことを実感して我に帰る。すると後方から声が聞こえてきた。
「お疲れ様!物質回収するね」
 こう言って飯島が物質回収に向かう。この後戦士3人は中村に回復を依頼し、今の戦闘について振り返る。ボスは戦闘中本気を出しているように見えなかったので、今後まだ強くなるタイプの可能性がある。このように話をしていると回収と回復が終わったので、本日は探索を終了することにした。ちなみに、このボスの名称であるが、部隊全員でイメージを出し合ってみたが、全会一致で“変な人”に決定することにしたのである。

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