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1999年5月10日(月)

【僧侶鍛錬場②:櫻木 美雨・山木 可奈恵】

「皆さん本日は2次試験3日目になります。2日目時点では罠解除士、魔術師合わせても課題クリアした人はまだ居ません。そろそろ出来る人が出てくる頃なので、皆さん今日も頑張りましょう」
 大きな声で元気に挨拶を行った櫻木 美雨の言葉を聞いて、僧侶受験者たちは全員真剣な表情になり、鍛錬を開始した。ここは僧侶鍛錬場②。本日は2次試験の3日目である。通常2日目に1名ぐらいは課題クリア者が出るものであるが、この20期試験ではまだ出ていない。なので、まだ20期での課題クリア1番の称号を取得する権利が全員に残されているのである。まあ取得したところで大した称号ではないのは確かだが。
「そろそろかな」
 受験生たちを見回りつつ、その指先を眺めながら櫻木が言葉を漏らす。櫻木の見立てではいつ光が発現してもおかしくないレベルの波動を感じるのは山木 可奈恵と梅本 孝史の2人である。だが当の2人はその事を知らないので、必死の形相で自分の人差し指の先端に集中しているのである。
「それでは一旦15分休憩します」
 前半の鍛錬が終わり、櫻木が15分間の休憩を全体に告げる。すると受験者たちはお手洗いや、水分補給など、それぞれが休憩時間中にやっておかないといけない事を行っているようだ。ちなみに2次試験のタイムスケジュールであるが、これは各職業によって多少の違いがある。僧侶の場合は9時から10時半までが前半の鍛錬時間であり、そこで15分休憩をとり、10時45分から12時までが後半の鍛錬時間となる。現在10時半を過ぎたので前半の鍛錬時間を終えたが、まだ誰も課題をクリアできていない状態だ。流石に今日中に1名ぐらいは課題クリア者を出したいと思っている櫻木であるが、こればかりは受験者が成功するのを待つしかないのである。そうこうしていると15分が過ぎ、休憩時間が終わる。
「それでは後半の鍛錬時間に入ります。皆さん集中して頑張りましょう!」
 この櫻木の声を聞いて、受験者たちは再度集中を開始する。そして再開の後30分ぐらいが過ぎて、山木 可奈恵の指先に光が灯り、僧侶での1番目の課題クリア者になったのである。もちろんこの後も鍛錬は続けられたが、本日は山木以外の課題クリア者は現れなかったのである。

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