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1996年8月27日(火)《BN》

【罠解除士鍛錬場:林 琢磨・宮本 紳・前島 瑠衣・中川 さゆり】
「あ、琢磨君おめー」
「やっとクリアできたねー」
 目の前で林 琢磨が罠解除装置のレベル3をクリアしたのを確認し、前島 瑠衣と中川 さゆりが祝福の声を上げた。ここは午前中の罠解除士鍛錬場。本日もたくさんの罠解除士が鍛錬を行っている。13期の罠解除士仲間である林、宮本 紳、前島、中川は朝から一緒に鍛錬を行っており、現在は13期生で唯一レベル3に成功出来ていない林が罠解除装置チャレンジを行っている所だった。ここ数日後少しで解除が出来そうなところまで来ていた林は、本日2回吹っ飛ばされて3回目のチャレンジで見事解除に成功したのである。ちなみに13期で初めにレベル3をクリアしたのは本日探索を行っている森下 翼であり、それは7月9日のことであった。なので、森下と比較すると約2ヶ月遅れのクリアということになる。ただ、森下のクリアが異常に早いのも確かなので、一般的には林の解除時期も驚くほど遅いというわけではない。
「ありがとう。やっとクリアできたっす」
「まあこんなもんだろ」
 笑顔で戻ってきた林に対して、宮本は少し冷たい態度で声をかける。相変わらずコミュ障的なところがあるので少し批判的に聞こえる言葉であるが、13期のメンバーはこれをきちんと変換して受け取ることができる。これは宮本にとっては祝福の言葉に分類されるのだ。
「でも翼くんがレベル4クリアする前で良かったね」
「流石に同期で2つ差は厳しいよねー」
 レベル3をクリア出来たことを再度前島が祝福し、それに中川が言葉を続ける。歴代罠解除士と比較しても能力上位であるとの評価を受けている森下は、スケジュールよりもかなり早く罠解除装置をクリアしている。だがレベル4の推定クリア時期は11月なので、流石の森下ももう少し時間がかかるはずである。
「とりま、13期全員レベル3クリアということで、今日は鍛錬後みんなでランチでもどうですか」
「私予定ないから大丈夫ー」
「私もー」
 自身のレベル3クリアを記念して、ランチに誘った林の声に、前島と中川は右手を挙げながら返事を返した。だが、宮本はこれに全く反応せず、光球を出したり消したりを繰り返している。
「宮本さんは何か予定あるんですか?」
「え、さっきのみんなに俺も含まれてたの?」
 思わず声をかけた林であるが、まさか先程の自分のみんなという単語に宮本が含まれていないと受け取られるとは思ってもいなかったので、思わず動揺してしまう。ただ、特に宮本にも予定がなかったので、結局鍛錬後は4人で『南食レストラン』に向かうことになったのである。

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