見出し画像

1999年6月23日(水)

【僧侶鍛錬場:笹井 未生・手島 哲士・稲見 正一郎】
「あれ、これ桃色かな?」
「桃色ですな。おめー」
 何気に手のひらの出現させた光球の色がいつもと違うのに気づいた笹井 未生が言葉を漏らし、それを聞いた手島 哲士が光球の色を確認した後で、祝福の言葉を述べた。ここは午前中の僧侶鍛錬場。本日もたくさんの僧侶が鍛錬を行っている。16期の僧侶である笹井と手島、稲見 正一郎は朝から一緒に鍛錬を行っており、現在は桃色の光球発現を目指して集中していたところである。
「どした、発現した?」
「おう、笹井たんが成功したよ」
 ちょっとお手洗いのために席を外していた稲見が戻ってきて、いつもと違う雰囲気を感じて質問し、それに手島が返事を返す。これを聞いて、稲見も笹井を祝福した。
「よーし俺らも気合い入れんとな」
「負けへんでー」
 二人が気合を入れるのを見て笹井は優しい笑顔を浮かべている。とりあえず現状の目標であった桃色球の発言に成功したので、安堵感を感じているようだ。次に僧侶が目指すのは光球の最終段階である虹色の光球であり、これを発現させるためにはまだまだかなりの時間が必要となる。一般的な習得スケジュールによれば、桃球発現から虹球発現までは半年程度かかると言われているのだ。
「じゃあ二人とも頑張ってね。先にクリアできた人はデートしてあげますよ」
「まじか!気合入りまくりんぐ!」
 2人のやる気を出そうと笹井が提案した言葉を聞いて、手島と稲見は歓喜の声をあげて鍛錬に集中する。結果数日後に2人は桃色球を発現するのであるが、成功したタイミングが全く一緒だったので、このデートの件の話はまた次の機会にということになったのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?