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1996年4月17日(水)《BN》

【調査室:川崎 志郎・谷口 竜一】

「ほとんどそれで間違ってはいないだろう」
「やっぱりですか。予言の書についてはかなり眉唾ものだと思いますが」
 報告を聞いた川崎 志郎が発した言葉を聞いて、谷口 竜一は難しい表情を浮かべて返事を返した。ここは川崎が自分の自宅とは別に、仕事用に借りているマンションの一室であり、この場所を川崎は『調査室』と読んでいる。迷宮探索事業の謎や、ゼーレの秘密など、この場所を中心に情報を整理しているのだ。ちなみにこの場所の存在を知っているのは川崎と谷口の2人だけである。今2人が情報を持ち寄って話し合っている内容は、旧熊大地下に存在する迷宮の数についてと、迷宮が出来た目的、今後迷宮がどのようになっていくかの3点である。まず迷宮の数については、現在2つの迷宮が存在するが、それ以上の迷宮が存在するのはほぼ間違いないと考えられている。予測に過ぎないが、少なくとも後3つは別の迷宮が存在するはずだ。また、迷宮が出来た目的であるが、元々迷宮は迷宮ではなく、旧陸軍兵器開発部により作られたものである。対人兵器として研究されてきた亜獣を迷宮内に放ち、その状況を逐一研究していたのである。初めのうち、亜獣は完全に人間の管理下に置かれていたが、ある爆発事件がきっかけで完全に人間の手を離れることになった。この出来事の後に第1迷宮と第2迷宮が現在の構造に作り替えられたと言われているが、このことにはある男が関わっていると考えられている。だがこれもまだ確実というわけではない。また、今後の迷宮の行末であるが、第2迷宮の最深部に予言の書という名の書物が隠されているという情報がある。この中身には今後の迷宮や亜獣のことについてが記載されているらしい。これもこのような書物があるという以上の情報は現在全くわからないのである。
「結局てへトリオ部隊に頑張ってもらうしかないな」
「何か手助けになる情報があれば良かったのですが」
 コーヒーを口に運んで川崎が言葉を漏らし、谷口も軽くため息をつきながら返事を返したのである。

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