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2024年9月24日(火)《GB》

《人によって聞こえる音の範囲が違うように、目に見える物も違うのかもしれない。見えない方が幸せかも》
【AXIS:夕陽 茜・富田 水無】
「あ、いらっしゃい」
 入り口から入ってきた女の子を見て、富田 水無は笑顔で声をかけた。ここはゲーム&喫茶『AXIS』喫茶部。14時を少し過ぎた時間であり、店内には数人の常連客がのんびりとした時間を過ごしている。本日は冒険者試験71期の発表日であり、冒険者組織本館前の掲示板には合格者の受験番号が張り出されている。もちろんインターネット上の冒険者組織ホームページでも合格発表は行われているので、わざわざ掲示板を見にいく必要はないのであるが、このアナログさが好きな人は毎年一定数いるようであり、今回も数人の冒険者たちが直に発表を確認しているようである。そして、その中には夕陽 茜も含まれており、先ほど掲示板まで受験番号を確認に行き、自分の受験番号が魔術師の欄に記載があったのを確認している。そしてその後で、『AXIS』に寄ってみたのである。
「こんにちは」
 声をかけられた夕陽は返事をしつつ頭をペコリと下げる。そして案内された席に座って軽く息を吐いた。前に来た時も感じたが、この喫茶店の雰囲気は自分に合っているようで、何か妙に落ち着くような感じを受ける。その点に満足しながらメニューを確認した。
「すいません。ナポリタンセットをください」
「はい、ナポリタンセットですね」
 軽く右手を挙げて夕陽が注文すると、富田が笑顔で返事を返してくれる。そしてそそくさと厨房らしき場所へと移動していった。料理が到着するまで夕陽はスマホをいじりながら、時間を潰す。狼たちもこの店を気に入ったらしく、リラックスした様子でくつろいでいるようだ。
「お待たせしました。ナポリタンセットです」
 こう言葉を発しながら富田がテーブルにナポリタンセットを置いていく。そして全て置き終わった後で声をかけてきた。
「そういえば今日合格発表だったんだよね」
 おそらく合格はしているだろうと予測している富田が一応結果を尋ねてみる。すると夕陽は笑顔で返事を返した。
「一応、合格してました。魔術師です」
「あ、魔術師なんだ。一緒だね。よろしく」
 合格していることを告げると、同じ魔術師だと返事を返したくれた。これを聞いて夕陽は頭をペコリと下げて、それから料理を食べ始めたのである。夕陽から見ても富田は非常に話しがしやすく、できれば仲良くしたい気持ちがある。ただ富田には狼の姿が見えないことは前回確認済みであり、そこだけが気になって頭を悩ます夕陽であった。

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