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1999年4月5日(月)

【熊本大学:鳥海 新一・寺川 紗矢佳・山木 可奈絵】
「何か久しぶりだねー」
「中学卒業してから全く連絡とってなかったからね」
 笑顔を浮かべながら発した寺川 紗矢佳の言葉を聞いて、山木 可奈絵が返事を返した。ここは熊本大学。本日は入学式であり、学内にある講堂にて入学記念式典が行われた。式典は粛々と行われ、先程無事に全ての題目が終了している。新入生たちは各々会場を後にし、熊大構内を移動する。するとサークル勧誘の先輩方が入学を祝いつつ、自分たちのサークルに勧誘すべく各所で壮絶なバトルが行われている。その中、寺川は自分が入ると決めていたサークルを探し出し、そのサークルのブースに向かうと、中学時代に仲が良かった山木とそこで再開したのである。2人は元々武蔵ヶ丘に住んでおり、寺川は自宅から北高に通ったが、山木は建軍にある親戚の家から第二高校に通ったのである。なので、中学卒業してからは1度も会うことなく、約3年ぶりの再会となったのだ。
「え、何学部?」
「私理学部だけど、紗矢佳は?」
「私は文学部。可奈絵理学部っぽいもんね」
「見た目ガッツリ文学部の紗矢佳に言われたくはない」
 学部を聞いた寺川のセリフをきっかけに、爆笑しながら会話が進んでいく。それを目の前で見ていた某サークルOの先輩たちは優しい表情で2人を見つめている。このような初々しい状況を見られるのは入学式だからこそであろう。この後2人は某サークルOの先輩方に挨拶し、今日は入会しなかったが、後日改めて入会すると挨拶した後、その場から離れる。そしてしばらく歩いていると、背後から声をかけられた。
「あれ、寺川さんと山木さんじゃない?」
 そう言われて振り返ると、これも中学時代の同級生である鳥海 新一であった。鳥海は親の仕事の都合で、中学3年生の秋に長崎に転校しており、そのまま特に連絡も取っていなかったのである。
「鳥海くんじゃない。懐かしいなー」
 元々中学生の時は仲良し3人組だったので、いきなりの再会を喜びあい、大学4年間また一緒によろしくと話し合う。そして、今日のところは一旦別れて、各々自宅へと向かうのであった。

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