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1996年3月29日(金)《BN》

【戦士鍛錬所:原田 公司・横山 真弓】
「あー、無事だったんですね~良かったです!」
 満面の笑みを浮かべて横山 真弓はこうつぶやいた。3月26日の黒髪てへトリオ部隊の探索の話は、冒険者組織では周知の事実であり、その探索で前田 法重が重傷を負い病院に運ばれたことも皆知っていることである。ただ、その後ある程度回復して、とりあえず危険な状態を脱したという内容はまだ知っている人が少ない。
「そうやね~。とりあえずは一般病棟に移ったから、心配しないといけない状態は脱しているよ。退院まではもうしばらくかかるかもしれないけどね」
 ベンチに座ってポカリスエットを飲みながら、原田 公司が横山にこう説明した。今日も朝から原田は若手のメンバーと一緒に鍛錬を行い、これまで8人に指導をしている。その最後が横山で、終わった後の休憩時間にこのような話になったのである。
「一般病棟に移ったんでしたら、友達と一緒にお見舞いに行っても良いですかね」
「良いと思うよ。前田さんの部屋はかなりゴージャスな個室だから、多少人数がいても大丈夫だよ」
 横山の質問にこう返事をして、原田は9人目の指導をするためにベンチから腰を上げた。

【北食2階:横山 真弓・管 恵美・高島 奈月】
「ということで、4月3日にお見舞いに行くということで大丈夫?」
 横山 真弓の提案に、管 恵美と高島 奈月は笑顔でうなずく。午前中の鍛錬の後、レストラン『北食2階』に集まったさすがに諸葛譚は良く守った部隊の3名は、昼食を食べながら各自のスケジュールを確認していた。話し合った結果、4月3日の午後が一番都合が良いということになり、その日に見舞いにいくことに決まったようである。
「じゃあ3日、午前の鍛錬終わったら、軽く昼ごはん食べて、一緒に病院に向かうということで。お見舞いの品は私が準備しとくね」
 食後のりんごジューズを飲みながら2人にこう話をする横山の頭の中は、お見舞いの品を何にするかで一杯であった。

【道:原田 公司・横山 真弓・富田 剛・本田 仁】
「3日?富田~、本田~。横山さんたちが3日に前田さんの見舞いに行くそうだけど、俺らも一緒に行く?」
「いいっすよ~」
 原田 公司の質問に、富田 剛と本田 仁は、何か別の話に熱中したらしく、軽いテンションで返した。前田 法重が入院しているので、何やら寂しい雰囲気の『道』であるが、あまりいつもと変わらないようであるのも確かである。違うところといえば、横山 真弓が原田の横に座って飲んでいるところであろうか。
「そうしてくれると嬉しいです。私たちだけで行くと何か緊張しそうですから」
 空いていた原田のグラスにビールを注ぎながら、横山は満面の笑顔でこう答えた。

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