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1999年4月15日(木)

【ハイライト:高嶋 美樹・櫻木 美雨・松島 明日香・滝川 亜佳里】

「では集計作業お疲れ様でした。カンパーイ」
 ご機嫌な表情を浮かべて高嶋 美樹が発した乾杯の声が店内に響く。ここはスナック『ハイライト』。本日は客も少なく、比較的静かな店内である。本日の17時に冒険者組織20期試験の募集が締め切られた。今まで応募があった分は随時データベースに登録し、いつでもゼーレに提出する準備は整えており、そして17時に締め切った後は最終日の本日ギリギリに申し込んだメンバーたちの集計や登録を先程まで行っていた。それが20時過ぎぐらいになって全ての業務が終わたので,ゼーレへの情報提出も無事に完了し、20期の募集業務が終了したのである。そこで何時ものように募集終了お疲れ様ということで一杯飲むことにしたのだ。もちろん1次選抜はゼーレが行うとはいえ、来月の6日からは選抜試験が行われるので、まだまだ20期選抜が終わったわけではない。だが、このようなタイミングで一旦息を抜いておかないと年中気が抜けない仕事であることも確かなのである。
「じゃあおかわりを頼むね。私はまだ生で良いとして、美雨はレモンサワー、明日香は赤ワイン、亜佳里は芋の水割りでいいのかな?」
 いつも良く飲んでいるメニューを頭に浮かべながら全員に質問すると、それで良いとのことなので、高嶋は店員に注文を通した。しかし、気持ち良いほどに全員好きなお酒が違うものである。
「どうでしょうかね?20期は」
「まあ、いつもと同じで試験始まってみないとわからないわね」
 毎回試験の度に疑問に思うことを松島 明日香が口にし、それに櫻木 美雨が答える。冒険者の応募に関して提出してもらう書類としては、現在一般的な求人に利用する履歴書と、冒険者組織でフォーマットを作成している自己アピール書類の2つである。この2つの書類をデータにまとめて、選抜についてはゼーレが行うのである。この時点で応募者の情報としてわかるものはこの書類に記載されているぐらいのものなので、実際どれぐらいの実力を秘めているのかというのは全く想像が出来ない。
「まあいつも通りそこは楽しみということで、今日は飲みましょう」
 こう口にして生ビールを一気に開けた高嶋は、他のメンバーのお酒がまだ残っているのを確認して、自分の生ビールの追加だけを頼んだのである。

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