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1999年4月3日(土)

【道:前田 法重・中島 一州・原田 公司・大塚 仁・中尾 智史・本田 仁】

「今のところ別に何か変わった感はないですよね」
「将来的にはどうなるか想像がつかんな」
 何やら考えながら発した中尾 智史の言葉に、前田 法重が冷静に返事を返した。ここは居酒屋『道』。本日もたくさんの客で盛り上がっている。前田事務所のメンバー達もいつもと変わらずハイピッチでアルコールを消費している。今話題になっているのは4月1日に米の関税化が始まったことについてだ。戦後長く続いていた食糧管理制度は1995年にすでに廃止されており、米の需給に関しては少しわかりにくい状況が続いている。そしておととい遂に米の関税化が行われ、外国産米が自由に輸入できるようになったのである。日本の米の値段が高価で外国産米の値段は安いということは情報として知れ渡っており、今後安い外国米が国内で流通すれば、日本の米産業が大打撃を受ける可能性もある。実際は関税の金額がまだかなり高いので、急激に日本産米への影響があることはないであろうが、将来的に関税が引き下げられれば、どうなるかはわからないであろう。
「後は味だよね」
「おいしさが一緒だったらそりゃ安いほうがいいですよね」
 値段と同じく気になるのは外国産米の味であると中島 一州が口にし、それに原田 公司が返事を返す。外国産米が関税化されたとはいえ、いきなり出回ることもなく、まだほとんどの人が外国産米を口にしていない。1993年に気候的な要因で米の収穫が激減した際に、タイや中国、アメリカから輸入した米が一時的に出回った。その際に外国産米を食べたものもいたが、美味しい調理法なども出回っておらず、美味しくないと感じた人が多かったであろう。だが、今後は出回る外国産米と一緒においしくいただく方法なども広まると考えられるので、味に関しては今の段階では評価が難しいのである。
「でも俺は日本米が好きですけどね」
「米に限らず日本産が良いわ」
 米に関しての感想を大塚 仁が口にし、米に限らず日本で作れるものであれば敢えて外国産ではなく、日本産で良いと本田が返事を返したのである。

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