見出し画像

1996年7月10日(水)《BN》

【熊大迷宮:カテジナさーん部隊】
「上出さんはそろそろクリア出来そうかな」
「先にクリアされちゃいますね」
 後方で戦闘を眺めながら磯田 健史が口にした言葉を聞いて、大野木 海が返事を返した。ここは熊大迷宮。カテジナさーん部隊は本日も地下5階のボスであるどさんぴんの部屋を訪れている。まずは隊長の磯田がカエルの彫像を動かしてどさんぴんを出現させたが、どさんぴんは戦うことなく消滅し、これで磯田はクリアということになった。そしてその次に上出 夏姫がどさんぴんを出現させ、現在戦闘中なのである。どさんぴん戦を初めてある程度の日数が過ぎているので、戦いもだいぶん安心して見れるようになっている。まだ無傷で倒せるほどではないが、確実にクリアに向かっていることは間違いなさそうだ。このようなことを考えながら見学していると、上出の一撃でどさんぴんは倒れ伏し、次第に消滅いった。
「おつかれさまー。物質回収します」
 戦闘が終わったのを確認して立原 和貴が物質の回収に向かう。それとすれ違いながら上出は大きく息を吐いた。
「上出ちゃーん。回復するからおいで」
 僧侶の藍 泰久が声をかけ、それを聞いて上出が近づいてくる。そして目の前までやって来たので、回復を施すことにした。
「そろそろクリアできるんじゃないの?」
「いや、まだ無理だと思う。戦っててわかる」
 回復中の上出に声をかけながら大野木はカエルの彫像へと向かっていく。その背中に向けて上出は正直な気持ちを吐露した。
「大野木、俺の名を言ってみろ」
 相変わらず不快オーラ満タンのどさんぴんが指を刺しながらこう発言する。それを聞いてイラつかずに対応することがどさんぴん戦でのマストなので、大野木は大きく深呼吸をして精神を落ち着かせ、両手剣を構える。
「勝負」
 こう叫んでどさんぴんに向かっていく大野木であったが、まだ実力が足りてないらしく、勝てはしたもののかなりのダメージをくらってしまう。その結果、藍の回復能力をたっぷりと消費させてしまい、本日の探索をここで終えることにしたのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?