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1996年5月8日(水)《BN》

【罠解除士鍛錬場②:赤澤 智鶴・金谷 達矢・築山 正憲・山口 可奈】
「あ、赤澤さん出来てる。おめでとうー」
 試験者を見回りながらちょうど赤澤 智鶴の近くを通っていた山口 可奈が、赤澤の指先に光が灯っているのに気づいて祝福の言葉を述べた。ここは罠解除士鍛錬場②。本日は2次試験の5日目である。試験も日程の半分を過ぎ、受験者達も少しずつ焦りだす頃である。その中で赤澤が罠解除士としては3人目の課題クリア者となったのである。ちなみに罠解除士ですでに課題をクリアしているのは築山 正憲と金谷 達矢であり、今の時点で3人課題クリアしているのは罠解除士だけである。
「ありがとうございます。やっと出来ました」
 安堵の表情をを浮かべた赤澤が返事を返すと、山口はそれに笑顔で返す。するとすでに合格していた金谷 達矢と築山 正憲が軽く拍手をしながら近づいてくる。
「赤澤さん。クリアおめでとう」
「おめでとう」
「ありがとうございます」
 2人の祝福に対して、素直にお礼の言葉を述べ、頭を深々と下げる。
「何かハイエナのようにやって来たわね」
「何すか!その例えは・・・」
 先程まで特に何もすることなく鍛錬場の一角でうだうだしていた2人が、赤澤のクリアに気づくや否や寄って来たことに対して山口がハイエナに例え、金山が驚きの表情で返事を返す。2人としては純粋に赤澤がクリアできたことを祝福に来たのであるが、そのように思われるとは考えてもおらず非常に心外である。
「まあまあ、皆さん落ち着いて。他の皆さんの邪魔になりますよ。ささ、こちらに」
 クリアできた喜びもあり、笑顔を浮かべている赤澤がこのように説明し、他の受験者の邪魔にならないように、4人一緒に鍛錬場の隅の方に移動したのである。

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