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1996年4月12日(金)《BN》

【北食2階:原田 公司・富田 剛・大塚 仁・本田 仁】
「確かに、俺も原田さんと同じ意見で、本田君は育成には向かないと思います」
「俺も本田は向いてないと思います」
「自分で言うのもなんですが、俺も向いてないと思います」
 北食2階でランチを食べながら、原田 公司の質問に対して、富田 剛、大塚 仁と本田 仁がこう答えた。
「やっぱりみんな同意見か。かといって、松島さん達の現状を放っておけないから、何とかしたいと思うんだけど、何か良い方法ない?」
「現役の魔術師で、松島さん達よりレベルが高いのが本田しかいない以上、現役以外の人から指導者を探すというのがセオリーかと」
 実際現役を引退して、若手を育成している大塚の言が正論であることは全員が理解できている。後は、その指導者を誰にするかということだ。
「では、可能性がある人を片っ端から当たることにしようかね」
 原田はこういいながら、食後のコーヒーを飲み干し、準備していたリストを3人に見せ、担当を振り分けた。

【冒険者組織職員室:大塚 仁・谷口 竜一・桜井 鼓美】
「大塚さんの話はわかりました。私たちの方でも現状を改善できるように努力させていただきます」
 桜井 鼓美は応接台の向かい側に座っている大塚 仁を見つめながら、このように発言した。大塚は昼食の後、罠解除士教官としての職務である定例報告を行うために、事務管理長である桜井を訪ねていた。その際に、昼食時に話題になった魔術師鍛錬所での状況を桜井に説明し、協力を仰いだのである。ちなみに、たまたまその時居合わせていた谷口 竜一は、別の机に座ってコーヒーを飲んでいる。
「助かります。俺たちのほうでもいろいろ声掛けはするつもりですけど、限界があるので。じゃあよろしくお願いします。谷口、またな」
 大塚はそういいながら、谷口に向かって右腕を上げ、出口へと向かい、それを見ていた谷口は特に表情を変えることなく、右手を上げた。

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