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1996年5月10日(金)《BN》

【魔術師鍛錬場②:太田黒 佳美・鬼塚 茉莉花・佐村 亜香里・西脇 有哉】
「さて、本日は2次試験最終日です。みなさん思い残すことのないように頑張りましょう。現在課題クリア者は3名ですので、今日クリアできれば合格の可能性が高まります!」
 緊張している受験者たちを前に、太田黒 佳美が鍛錬開始前の挨拶を行っている。ここは魔術師鍛錬場②。本日は14期2次試験の最終日である。各職業とも本日の結果で採用可否が決まり、来週の月曜日に合格発表となる。先程の太田黒の言にあるように、現在魔術師で課題をクリアしているのは3名。鬼塚 茉莉花と佐村 亜香里、西脇 有哉である。ちなみに今の時点で僧侶も3名、罠解除士は4名が課題をクリアしている。
「昨日見ていた感じで、本当にあと少しでできそうな人が何人かいましたので、頑張ってください。それでは鍛錬を開始してください」
 この太田黒の声によって、受験者たちは一斉に鍛錬を開始する。各自指先に集中し、光の発現をイメージしているのである。すでに課題クリアしている鬼束と佐村、西脇は他の受験者たちと少し離れた場所で、今後のための鍛錬を行っている。魔術師として迷宮を探索するのに必要なのは精神力であり、それは集中力と、その集中を長く保つための持続力が必要である。そこで基本的な鍛錬は集中力を鍛えるための瞑想がメインとなるが、とはいえ体力も必要なので、ある程度のストレッチも必須である。ただ、瞑想が意外と精神力を疲労させるので、ストレッチはその回復の役割も担っており、バランスの良い鍛錬が出来ているようだ。
「あと2人誰になるかねえ」
「俺らじゃ全くわからんからな」
 大きく背伸びをしながら佐村が発した言葉に、西脇が返事を返す。教官の太田黒の話では、指先が光に発現する前の空間の歪みを見ることができるそうであるが、もちろんまだ自分たちにそれを確認することはできない。誰が光発現に一番近そうなのかはまったくわからないのである。そうこうしているうちにあっという間に試験時間は終了を迎え、本日指先に光を発現させることが出来た吉江 海咲と浦部 佳孝を合わせて、課題クリア者はちょうど5人という結果となったのである。

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