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1999年3月27日(土)

【道:前田 法重・中島 一州・原田 公司・大塚 仁・中尾 智史・本田 仁】
「いろいろ苦労があったんでしょうね」
「もう楽しく歌えなくなったな」
 テレビから流れるニュースの音声を聞きながら中尾 智史が発した言葉に原田 公司が大人しい口調で返事を返した。ここは居酒屋『道』。本日もたくさんの客が訪れて店内は大盛況である。前田 法重とその他大勢のメンバーたちもいつもの場所でいつもの様に宴会を実施している。先程からテレビから流れているニュースは、ある俳優さんが、自宅で自ら命を落としたという話題であり、本日テレビでは一日中この話題で持ちきりである。この俳優は元々不良っぽい役柄で役者デビューをし、そのあとは歌手としてもアイドルさながらのヒット曲を飛ばし、時の人となる。その後も活躍を続けていたのであろうが、メディアの露出はそこまでもなく、本日のいきなりのニュースに世間は驚愕したのである。
「芸能界はいろいろ闇深そうだからね」
「俺もアイドルにならなくて良かったわ」
「なれんわー!!」
 しみじみと中島 一州が漏らした言葉に、原田が自身の感想を口にする。その言葉に対して大塚 仁が音速で突っ込みを入れた。原田はたしかに冒険者組織内ではイケメンの部類に入るが、とはいえアイドルになれるほどではない。冒険者組織の男性でルックス的にアイドルになれそうだったのは、今までの全冒険者を含めても森下 翼ぐらいである。
「まあでも原田と中尾だったらイケメン男性デュオとかギリギリいけそうだけどね」
「貴様は今までに売れたCDの枚数を覚えているのか」
「それはディオ」
 ビールを注いでもらいながら前田が自分の考えを述べると、それに本田が渋い声で何かのセリフを呟き、それに対して大塚が安定の突っ込みを入れたのである。

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