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1996年5月11日(土)《BN》

【道:前田 法重・佐々木 雅美・原田 公司・富田 剛・中尾 智史・本田 仁】
「おっとろしいよなあ」
「暴徒ですよね」
 真面目な表情で言葉を発した前田 法重に、本田 仁が返事を返した。ここは居酒屋『道』。本日もたくさんの客で賑わっている。前田チームのメンバーもいつものように宴会を開始しており、すでに2時間程度の時間が経っている。先程思い出したように本田が口にした話題は、おとといの生卵事件のことである。日生球場で近鉄に2−3で負けたダイエーホークスのバスに向かって暴徒と化したファンが生卵を投げつけた事件だ。
「世界の王監督ですよ」
「でも9勝22敗はファンはきついよ」
 ダイエーの王監督大好きの富田 剛が言葉を述べ、それに原田 公司も感想を述べた。富田は広島ファンであり、ダイエーファンではないので、ダイエーが勝とうが負けようが特に何も思わない。だが、王監督は選手の時から好きだったので、応援はしているのである。
「私よくプロ野球ってわからないんですけど、やっぱりファンっていうのは、自分の応援チームの成績が悪いと暴徒になるほど怒るものなんですか?」
 素朴な疑問を佐々木 雅美が質問する。それに回答しようとするも、ここに本気の野球ファンがいるわけでもないので、少し回答に困っている。
「俺らそこまでのファンじゃないから別にそれでどうってことはないけどな」
「生卵投げたりはしないですよね」
 何とか回答を絞り出した前田の言葉に中尾 智史も返事を続ける。やはりここにいるメンバーでは熱狂的ファンの心理はわからないものなのだ。
「そういえば大塚はダイエーファンだったよな。大塚ならどうしますかね」
 身内の中にダイエーファンがいるのを思い出し、富田が口を開く。それを聞いて、少し考えたあとで本田が口を開く。
「大塚だったらゆで卵投げるんじゃないですか」
「それ卵じゃなくて良くね?」
 勝手に大塚の対応を予想した言葉を聞いて、原田がすごく当然な突っ込みを入れた。

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