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2024年6月26日(水)《GB》

《冒険者のひとりごと部隊の探索日は水曜日にする予定だったけど、火曜日にしてしまった。まあいいか》
【AXIS:有村 藤花・澤口 恭平・富田 水無】
「え、澤口くんいつからいた?」
「俺はいつも藤花さんのそばにいますよ」
「変なこと言うのやめれ」
 驚いた表情を浮かべて富田 水無が発した言葉を聞いて、澤口 恭平は嬉しそうに返事を返す。そしてそれに有村 藤花が少し厳しめな口調で突っ込みを入れた。ここはゲーム&喫茶『AXIS』喫茶部。本日午前中有村は鍛錬、富田は探索を行い、午後は大学の講義を受けるために一緒に熊大へと移動する。そして講義を2つ受けた後、また冒険者地区に戻ってきて『AXIS』で夕食を食べようとしていたのだが、いつの間にか澤口が一緒にいるのに気づいたのである。
「えー、バスにはいなかったよね」
「JRでも気配は感じなかった」
 記憶を辿りながら富田が言葉を漏らし、それに有村も考えを続ける。最近3人で行動することが多く、澤口がいることに全く意識を感じなくなっている。富田は記憶を遡ってみるが、バスにはいなかったし、列車の中にもいなかった気がする。
「バス降りてからだよね。そこからは何かいたような気がする」
「さすが藤花さん!その通りでございます」
 合流のタイミングについての考察を有村が述べて、それが正解であることを澤口が述べる。実は大学構内で2人を見つけた澤口は声をかけようとしたのだが、今から冒険者地区に戻って『AXIS』で夕食を一緒に食べようかと言う話が聞こえてきたので、バイクを飛ばして先回りをしたのである。そして2人が旧熊大前のバス停で降りた時に、さりげなく合流し、一緒に『AXIS』に入店したのだ。
「何かストーカーっぽいのやめてくれないかな」
「誰もこの湧き上がる衝動を止めることはできませんよ」
 ため息を吐きながら発した有村の言葉に、澤口が自信満々に自分の気持ちを伝える。この後2人はいろいろ言い合いをはじめ、基本的には有村が口にする文句に対して澤口が自分の気持ちを踏まえて回答している。これを静かに眺めていた富田は、2人の会話が止まったタイミングで口を開く。
「何か微妙に仲良くなってない?」
「ですよねー」
「なわけない」
 2人が返事を返したタイミングは全く同じであったが、その意味は正反対のものであった。

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